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レポート

2019/04/09

神戸大学医学部・近畿大学薬学部合同セミナー

病院と薬局が連携してがんの副作用を管理

在宅では支持療法薬の使い方と病院に連絡するタイミングが大切

八倉巻尚子=医学ライター

 医師をはじめ多職種の専門家がチームとして担っているがん治療の中で、薬剤師は治療薬の説明や副作用への対応など、薬に関することを主に担当する。病院にいる間はこうした医療スタッフが患者をサポートしてくれるが、家に戻ってからも、病院と地域の保険薬局が連携して患者を支える取り組みが進められている。

 7大学連携個別化がん医療実践者養成プラン 神戸大学医学部・近畿大学薬学部合同セミナー「多職種でささえるがん薬物療法~院内・地域における連携強化をめざして」が3月に開催され、神戸大学医学部附属病院の薬剤部と地域保険薬局による薬薬連携の取り組み、近畿大学医学部附属病院におけるチーム医療での薬剤師の役割が紹介された。


通院治療室での薬剤師の仕事

 神戸大学医学部附属病院教授・薬剤部長の矢野育子氏は、「抗がん薬の副作用マネジメントにおける地域薬局との連携」と題して同施設における取り組みを紹介した。

矢野育子 氏

 通院でのがん薬物療法は、腫瘍センターの一部署である通院治療室で行なっている。1年でおよそ1万人の患者が治療を受けており、「ほとんどの患者さんが初回から外来で化学療法を始めています」と矢野氏は説明した。通院治療室の中にある薬剤部では、患者への治療説明と診察前の面談、そして抗がん薬などの無菌調製を行っている。

 さらに「新しい仕事」として、(1)副作用対策の標準化に向けた全診療科共通の院内マニュアルの作成、(2)経口抗がん薬の薬薬連携、 (3)免疫チェックポイント阻害薬で副作用が起こった場合の診療科横断的な体制づくりを、薬剤部が中心となって進めている。

通院では患者自身の体調管理が重要

 「通院のがん化学療法では、患者さん自身による体調管理が非常に重要です」と矢野氏。入院中であれば、医療スタッフがそばにいるため、患者の体調の変化や副作用に対応してくれるが、通院の場合は患者が自分で行わなくてはならない。それには3つのポイントが大事だという。1つめは、副作用の重篤化を未然に防ぐため、自宅での支持療法薬の使用方法を理解すること。2つめは、どのような症状が出たら病院に連絡するか、つまり内服を中止すべき症状の基準を理解すること。そして3つめが、どこに連絡したらいいかを知っておくこと。

 しかし「同じ薬であっても、診療科によって指示が違う、基準が違うということがありました」。そこで院内で全診療科共通の基準を作ろうということになった。化学療法で起こりやすい下痢や発熱、悪心・嘔吐、口内炎、皮膚障害、間質性肺炎などの稀だが重篤な副作用について、緊急時に患者が病院に連絡する基準と自宅での対応のマニュアルが作られた。通院治療室の薬剤部が作成し、腫瘍・血液内科が監修して、各診療科の代表が集まる通院治療室運用委員会で承認を得て完成させたものだ。

 たとえば下痢の時の対応は、止瀉薬(ロペラミド)の処方がある場合と処方がない場合の2通りに分けられているが、いずれの場合でも下痢の重症度がグレード2、すなわち普段の排便が1日1回ならば朝から下痢が4回以上続いた場合は病院に連絡するという基準が設けられた。また下痢の他に随伴症状として、食事だけでなく水分もとれない(飲食不可)、激しい腹痛、嘔吐、めまい、血便や黒色便、発熱があったときは、すぐ病院に連絡することと定めている。

 同じ内容を患者のために「副作用説明書」として作成した。ロペラミドの飲み方や病院に連絡する基準に加え、「どういうものが水様便なのかが目で見てわかる」ように、下痢便の形状をイラストで示してわかりやすいものにした。病院の連絡先も記載され、「誰でも閲覧・活用できる共通のツール」の1つとして作成したという。

 また患者向けに「レジメン説明書」も作成された。説明書のおもて面には、薬をいつ飲むかを示したスケジュールと、治療による副作用がどの時期に起こりやすいかが、カレンダー形式で書いてある。うら面には副作用についての説明がされている。たとえば間質性肺炎の場合は、「肺胞が炎症を起こして、動脈中に酸素が取り込みにくくなる肺炎です」という病気の説明と、「階段を登ったり少し無理をすると息切れや息苦しさが出る、空咳が出る、熱も一緒に出る時は、連絡してください」など、病院に連絡する目安も記載している。

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