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2019/04/02

がんで入院した子どもの勉強する権利を守る

成人患者が主体のがん専門病院における取り組み

森下紀代美=医学ライター

子どものあるべき姿は学校に行くこと

 GCLS研究会の活動の一部は、これまでにも紹介している。
「親ががんになった子どもを支えたい」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201607/547664.html
「がん患者の妊孕性を守りたい」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/201802/554948.html

 今回、訪問学級のために教室を設置する活動を行ったのもGCLS研究会だった。整形外科病棟の廊下の片隅で子どもたちが勉強している状況を心配した看護師が、専用のスペースを設置することができないか、同研究会で提議した。市村氏らが同院の運営サイドに働きかけたところ、理解が得られ、整形外科病棟の一室を新たに教室として改装し、日中は訪問学級、使用しない時間帯は看護師の教育研修センターとして、利用できることになった。

 部屋の面積は理科の実験などもできるよう広めにし、可動式の壁を設置して、閉鎖した空間ができるようにした。限られた病院内のスペースを有効活用する方法は、他の病院でも応用できる可能性がある。

市村 崇 氏

 市村氏は「入院期間の長さにかかわらず、子どもには教育を受ける権利がある。子どもにとっての仕事は勉強をすること。子どもにとっての学校はいるべき場所であり、入院をしていてもいるべき場所としての訪問学級があることが、義務教育の子どもを治療するにあたり考慮すべきことだと思う。がん研究会有明病院はがんの専門病院として、診断・治療を行うだけでなく、子どもにとってあるべき姿、いるべき場所である学校を提供していきたい」と話した。

 中村氏は、訪問学級は患者である子どもだけでなく、子どもの親にも良い影響をもたらしている可能性があるという。

 まず、子どもにとっては、学級という社会とつながることになる。そして、合同で行われる実験などの授業で同じ年代の子どもと仲良くなると、治療のつらさも一緒に乗り越えられるようになる。

 子どもの親は、さまざまな場面で不安や孤独感を持つ。病院を出れば、周囲に同じ病気で治療を受けている子どもはいない。子ども同士が仲良くなり、親同士も仲良くなると、そうした不安や孤独感が軽減する場合がある。中村氏は「子どもが一生懸命勉強している姿を見ることでも、安心されていると思う」と話した。

 親が最も心配するのは、子どもが前籍校に戻った時になじめるかどうかだ。勉強が遅れ、学校に行きたがらなくなる子どももいる。治療のため、手足を切断しなければならない子ども、手足の骨が1本ない状態になる子どももいる。そうした子どもに対し、学校側が消極的な対応や腫物に触るような対応をすることもあるという。

 そうしたことが出来るだけないよう、前籍校の教師を病院に招き、子ども、親、墨東特別支援学校の教師、医師や看護師、医療ソーシャルワーカーとともに、地域の学校に戻る時のための話し合いの場が持てるようになったという。互いにわからないことや不安に思うことを共有し、子どもがスムーズに学校に戻れるよう、対応がとれる体制ができてきた。

中村 美穂 氏

 今後の課題は、高校生の患者への対応である。ユーイング肉腫などで入院する高校生の患者は、訪問学級の対象にならない。治療期間は約1年間に及ぶため、高校生の場合は学校を休学したり、留年したりすることもある。勉強が遅れたり、学校に戻ってもなじめなかったり、大学受験を希望している場合は1年を棒に振ってしまうこともある。

 学習のための専用スペースが設置されたため、「日中の使用していない時間帯や、消灯の21時を過ぎてからの時間など、高校生の患者が勉強するために開放することも考えたい」と中村氏は話した。

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