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レポート

2019/04/02

がんで入院した子どもの勉強する権利を守る

成人患者が主体のがん専門病院における取り組み

森下紀代美=医学ライター

成人主体のがん専門病院で院内学級を設置する難しさ

 小児がんの治療を行っている全ての病院に、院内学級が設置されているわけではない。

 厚生労働省は、全国で質の高いがん医療および小児がん医療・支援を提供するため、現在、がん診療連携拠点病院を401箇所、小児がん拠点病院を15箇所指定している。一方、2015年と2016年のデータをもとに作成された「院内学級のあるがん診療連携拠点病院等一覧」(国立がん研究センター 小児がん情報サービス)には、全国で189施設の記載がある(https://ganjoho.jp/data/child/support/school/hospital_school.pdf)。院内学級は小児がん拠点病院の全てに設置されているのに対し、がん診療連携拠点病院では半数程度にとどまっている。

 小児がん患者の多くは小児がん拠点病院や小児の専門病院で治療を受けること、がん診療連携拠点病院は成人のがん患者が主体で、小児がんの治療を行っていない施設が含まれることがこの背景にあると考えられる。しかし、大学病院には小児の患者が入院している。中村氏は「成人患者が主体のがん診療連携拠点病院では、小児患者の数が限られるため、病院内教育の必要性が十分理解されていない可能性がある」と話した。

 がん研究会有明病院は、治療できる施設が限られる希少がんの治療を行っているため、全国から小児がんの患者が治療を受けに来る。同院に入院している患者は、取材当日(2019年1月末)で627人。18歳以下の患者は5人で、このうち義務教育の年齢の患者は2人、高校生の年齢の患者は3人だった。

 同院の訪問学級には、同じ江東区にある東京都立墨東特別支援学校(以下、墨東特別支援学校)から教師が派遣され、月曜日から金曜日まで、基本的にマンツーマンで授業が行われる。病状や体調に合わせて行われるため、教師が看護師と体調を相談し、授業を受けることが難しいと考えられる場合は中止されるが、受けられる状態であれば1時間でも、病床で寝たままでも、授業を受けることができる。

 最近では、カメラやマイク、スピーカーが搭載され、インターネットを通して操作できる「OriHime」(オリィ研究所)を用いて、入院する前に通っていた学校(前籍校)と交信したり、iPadを用いて前籍校の始業式で校長先生の話を聞いたりするなど、前籍校とのつながりも保ちながら過ごせるようになった。始業式や終業式には看護スタッフも出席している。

 希少がんで若年者に発症することが多い骨肉腫を例にとると、術前化学療法を行ってから手術を行い、さらに術後化学療法を行うことが標準的治療となっている。治療期間は1年前後に及ぶため、現在は術前化学療法のために約2週間入院した後、一度退院し、再度入院して次の治療を受けるスケジュールとなっている。入院中は墨東特別支援学校への転入学、退院時は前籍校に復学する手続きが必要になるが、入退院を繰り返す治療の場合は、墨東特別支援学校に籍を置いたままにすることもある。治療のスケジュールは、前籍校の行事に子どもができるだけ参加できるよう、配慮して組まれている。

 ただし、これまでは訪問学級の専用スペースがなかったため、授業は病室の4人部屋の片隅や廊下の片隅で、パーテーションを置いた急ごしらえの場所で行われていた。病室では他の患者から「うるさい」と苦情が出たり、廊下ではベッドの移動が行われていたり、看護師や他の患者が歩いていたりする中で、勉強をしなくてはならない状況だった。

パーテーションで急ごしらえの教室
(中村美穂氏提供)

廊下の片隅で授業
(中村美穂氏提供)

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