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レポート

2019/03/12

愛知県がんセンター公開講座より

20代・30代女性で増えている子宮頸がん

出血やおりものなど気になる症状があれば躊躇せず早期の受診を

八倉巻尚子=医学ライター

がん教育の重要性

 子宮頸がんが増えている20代、30代は女性のライフステージにおいて結婚や妊娠、出産を考える時期に重なる。一般に中年期以降になるとがんにも気をつけるようになるが、「20代、30代は病気への関心が低く、不規則な食生活や睡眠不足でも体力があるので平気で、忙しいため健康管理がおざなりになりやすい」

 「出血は気になったけど、痛くないから大丈夫だと思っていた」「子宮頸がん検診を知らなかった」「検診があるのは知っていたけれど、自分は必要ないと思っていた」「まさか妊娠できなくなるなんて」「がんで死んでしまうの?」

 これらは子宮頸がん患者さんの声だ。若い世代で子宮頸がんが多い背景には、「性感染症や避妊、子宮頸がんの知識が不足していることもあるのかなと思っています」と水野氏は言う。

 米国やカナダ、オーストラリアなどでは、患者教育や医療者教育を通して、患者自身が自分の病気を理解して、治療法についても自分が主体的に選ぶという、患者の自己決定権の尊重が根付いていった。さらに健康な人や子供たちに対しても、予防の観点から「自分自身で何ができるか」を考えさせる教育が行われるようになったという。国が情報提供や教材づくりを行い、民間や地域のチャリティー団体なども教育や授業を行っている。

 がん教育の一環として功を奏した一例が、オーストラリアにおける皮膚がんの発生率低下だ。皮膚がんは過剰な紫外線の曝露が原因の1つと考えられている。オーストラリアでは1980年代以降、皮膚がんの発生率は上昇していた。そこで政府が学校、職場、保育所などで皮膚がん予防キャンペーンを展開。「長袖のシャツを身につけましょう」「日焼け止めクリームを幼少期から塗りましょう」「外を歩くときは帽子・サングラスを」など、子供たちが自らできるような形で継続的に予防策を実施した結果、皮膚がんの発症率が下がってきている(2016年、QIMR Berghofer Medical Research Instituteの調査結果)。

 日本でも、文部科学省が「がん教育」の在り方に関する検討会を設置し、学校でのがん教育に乗り出している。がん対策基本法の下で策定されたがん対策推進基本計画(平成24年6月)で、子供が「がんに対する正しい知識とがん患者に対する正しい認識をもつよう教育すること」を目指しているためだ。平成26年から「がんの教育総合支援事業」でモデル校を選定、外部講師を派遣しての授業、教育ガイドラインの作成などを進めているが、全国的に普及するのはまだ先のことになりそうだ。

自覚症状がなくてもがん検診、自覚症状があれば早期の受診を
 
 現在、日本の子宮頸がん検診の受診率は、他の先進国と比べて明らかに低い。受診率は年々増加傾向にはあるが、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、20-69歳女性における子宮頸がん検診率はアメリカが84.5%、イギリス77.5%、韓国は66.7%、それに対して日本は42.1%だった(OECD Health Statistics 2015)。なお自治体によって検診率は異なり、「名古屋市では5割に到達していますが、それでも日本の子宮頸がん検診の受診率はこれだけ低いのが現状です」と水野氏は説明する。

 子宮頸がんを防ぐにはがん検診が大切であり、症状がなくても、性行為の経験があり、がんが心配であれば「がん検診を受けていただきたい」。月経不順や月経以外の出血、月経時の出血が多い、異常なおりもの、月経痛などの症状があったら、「躊躇せず、早く受診してほしい」と話した。また予防のためには、性行為の際にはコンドームを着用する、性行為をする前あるいはまだ感染は起こしてない人では予防ワクチンという方法もあるとした。

 子宮頸がん検診では、問診と内診を行い、子宮の入り口の細胞をこすって細胞を調べる。がんを疑う細胞があれば要精密検査となる。子宮頸がん検診は、住民検診や職場の検診、自費検診で受けることができ、2年に1回の検診が推奨されている。また自己採取方式は勧められないとしている。
 
子宮頸がんワクチンの現状

 子宮頸がんの発症がヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に関連することが明らかになり、そこからヒトパピローマウイルスの感染を予防するワクチンの開発が飛躍的に進んだ。日本ではHPV 16型と18型に対する2価ワクチンと、HPV 16型と18型、さらに尖圭(せんけい)コンジローマなどを起こすHPV 6型と11型に対する4価ワクチンがある。

 子宮頸がんワクチンは平成25年(2013年)4月に定期接種化されたが、ワクチン接種後の全身の疼痛、知覚障害、運動障害、記憶障害などの被害が報告され、6月に積極的な接種の推奨が中止され、現在もまだワクチン接種の積極的な推奨はされていない。ただ定期接種は継続しているため、「その有益性とリスクを理解された方は自己判断で接種が可能」で、何かトラブルがあった場合に対応する相談窓口や法に基づく補償を受けることができる。

 海外では4価ワクチンが2006年に、2価ワクチンが2007年に販売が開始された。米国では2009年に安全調査が行われ、2300万接種の時点で安全性は他のワクチンと比べて差はないと報告された。2013年には1億7500万接種の時点で、同様の見解となっている。さらに米国、カナダでは9種類のウイルスに対するワクチンも使用されている。

 ワクチンの効果に関して、2013年6月に米国疾病対策予防センターは、14-19歳の女性での感染率がワクチン導入前に比べて56%減少したと発表。オーストラリアではワクチン接種者は非接種者に比べて上皮内がんや高度異形成になる人が47.5%減少したというデータが出されている(BMC Med 2013;11:227)。

 最後にまとめとして、子宮頸がんを予防し、妊孕能(妊娠する能力)を守るためには、「まずきちんと生命の大切さ、妊娠について学び、子宮頸がんについて知ること」と水野氏は話した。子宮頸がんの検診を受け、妊娠を望まないのであればコンドームなどを使って、がんやクラミジアなどの性感染症を予防する。そして予防ワクチンの接種も含め、「これらをきちんと自身で理解した上で、選択肢の決定は自分で行います。ただ、お子さんに関しては、親御さんがきちんと理解した上で、お子さんと話し合って、決定することになるかと思います」。そして「早期発見・早期治療で、子宮も命も守って欲しいなと思っています」と述べた。

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