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レポート

2019/1/22

横浜市立大学・第26回がんプロ市民公開講座より

あなたががんになった時の身近なサポーターは?

自分らしく生きるために必要なサポーターを知ってほしい

森下紀代美=医学ライター

少しでも先の光が見えるサポートを

 がん患者は、意思決定を行わなければならないさまざまな場面に直面する。まず、治療内容を決める時である。これには診断や治療を行う時期、治療を継続する時、再発・転移の時などが含まれる。次に、治療の中断または中止を決断する時である。そして人生の最終段階での意思決定は、療養する場所を決める時となる。

 がん患者が意思決定を行う際に、支える役割を担うのが看護師やソーシャルワーカーだ。がん医療の知識を生かし、さまざまな選択肢の中から、その人が納得できる選択ができるよう、必要な情報提供と心理的支援を行っている。さらに看護師は、副作用への対応、生活や仕事への影響、外見や自分らしさの変化、家族との関係や役割の変化などに関する相談を受け、必要なケアを提供している。

 支援の一つに、アピアランスケアがある。これは外見の変化がもたらす患者の苦痛を緩和するためのケアで、例えば多く寄せられる相談の一つ、化学療法による脱毛には、脱毛が始まる前から、髪を短くすること、頭皮のケアの方法、ウイッグやキャップの選び方などを指導している。また乳房切除後には、補整下着や人工乳房などで工夫できることを情報提供している。

 社会的な問題に対する支援も重要で、その一つが就労支援である。「がんの治療で会社に迷惑をかけるから退職しなくては」と考える患者は多く、相談に来る時にはすでに退職しているケースも少なくない。しかし、仕事を続けていれば、診断書を提出し、傷病手当や療養休暇の申請や、いつ、どのように休めばいいかなど、就労の仕方について相談することができる。「辞めない就労支援が重要」と渡邉氏は強調した。

 療養の場が在宅に移行する際には、医療連携調整も必要だ。看護師はさまざまな疾患の患者で医療連携を行い、時間、場所、人、資源を調整するが、がん患者では特に時間が重要になる。進行した状態の患者では、急激に体力が低下したり、症状が進んだりすることがあるため、タイムリーな医療連携が必須となる。在宅療法を支えるサポーターにも、訪問診療医、訪問看護師、訪問薬剤師、訪問リハビリを行う理学療法や作業療法士、訪問歯科診療、訪問栄養士、ケアマネージャー、介護士など、多くの職種が含まれている。

 それでもなお、がん患者やその家族は、専門家による相談支援や情報提供だけでは十分解決できない悩みや不安を抱えることがある。渡邉氏も、喉頭がんで声を失う患者、若くして人工肛門の造設を余儀なくされる患者の苦悩は、体験者でなければ癒せないと感じたという。同じ経験を持つ患者と出会い、話を聞くことにより、気持ちが軽くなったり、療養生活をうまく送るための知恵を得たりすることができる。患者会など、体験者同士の支え合いは大切だ。

 最後に渡邉氏は、がん相談支援センターで相談支援を担当した1例を紹介した。患者は、緒方氏の講演でも紹介された30代の男性。渡邉氏は、男性の両親から「本人が抗がん剤治療を受けないと言い張っているため、受けるよう説得してほしい」と相談された。渡邉氏は「決めるのは本人であり、説得はできないけれども、息子さんと一緒に考えることはできます」と話し、その1週間後、男性が面談に訪れた。1時間の面談のうち、40分は沈黙の時間となった。渡邉氏は患者が言葉を発するまで、ただそばにいて、寄り添った。

 「治療をしてもしなくても再発するのなら、治療をしたくない」という男性に、渡邉氏は治療を受けない場合のデメリット、起こりうる症状を伝え、その対応について話し合った。男性は通院しながら緩和ケアに通い、最期は「自分らしくいられる自宅で過ごしたい」という希望がはっきりしてきたため、医療連携調整を行った。男性は最期まで自宅で過ごし、亡くなった後に来院した父親は「最期まで自分の意思を貫いた息子を誇りに思う」と話した。

 「多くの患者さんは、私が面談でお会いする前に、医師からとても厳しい病状説明を受けている。絶望の状態から少しでも先の光が見えるようなサポートをしたいとずっと思ってきた」と渡邉氏は当時を振り返った。

 最後に渡邉氏は「がん医療には多くの専門家がいる。ご家族や友人も含めて、あなたにとって必要なサポーターを知ることから始めていただきたい」と呼びかけた。


 セミナーの名称にあるがんプロとは、がんプロフェッショナル養成プランの略。文部科学省が2007年より第1期「がんプロフェッショナル養成プラン」を推進、2017年からは第3期として大学間の連携による「がん医療人材養成拠点」において、各大学の特色を生かした教育プログラムを構築し、がん医療の新たなニーズに対応できる優れたがん専門医療人材(がんプロフェッショナル)を養成する取組みを支援している。
 全国に11拠点(81大学)が設置され、横浜市立大学は、東京大学、東邦大学、自治医科大学、北里大学、首都大学東京と連携している拠点の1つ。今回、横浜市立大学が主催する第26回がんプロ市民公開講座が開催された。
【横浜市立大学がんプロHP】http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~yganpro/

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