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レポート

2019/01/15

「おっぱいらしさ」を追求する乳がんの手術(その2)

根治性と整容性は両立する?

福原麻希=医療ジャーナリスト

 がんの治療によって見た目が変化しても、生活に復帰できるようになれば、よしとすべきなのか。乳がんの根本的な治療(根治性)と乳房のアピアランス(appearance:外見、整容性)の両立を目指す「乳房のオンコプラスティックサージェリー(Oncoplastic Surgery)」を紹介する。2回目は、「乳房へのこだわりとがんの根治性」について考える。


 2013年、国立がんセンター中央病院1階ロビーに「アピアランス支援センター」が開設されたことをきっかけに、「がん患者のアピアランス」が広く注目されるようになった。
(参考記事:国立がん研究センターが「がん患者の外見の悩みに正面から取り組む」)

 アピアランス支援センター長で臨床心理士の野澤桂子氏の調査では、乳がんの治療にともなう身体症状の苦痛トップ20項目のうち、外見の変化に関する項目が12項目もあがった。1位は脱毛、2位は手術による乳房切除、3位は吐き気や嘔吐、このほか、眉毛・まつげ・手術による体の表面の創・手の爪の割れ・二枚爪・手足の爪のはがれ・顔や足のむくみ・シミ・クマなどがあげられ、身体の痛みよりも、外見の変化のほうが患者に苦痛をもたらしていることとわかった。

術後の乳房に違和感があったら、医師に話していい

 それでは乳房温存治療後、乳房の形状に不満がある場合、どうしたらいいだろうか。がんの治療後も恋愛し結婚していくことを含めて、生活上で乳房の形状はとても気になる。

埼玉医科大学総合医療センターブレストケア科診療部長の矢形寛教授

 埼玉医科大学総合医療センターブレストケア科診療部長の矢形寛教授は「術後の乳房のできあがりに納得できない場合は、医師に正直にその話をしたほうがいい」と助言する。

 でも、そんなことを言われても、患者にとっては「なかなか難しい」と感じるかもしれない。矢形教授は「医師も患者さんがそんな話をしやすい雰囲気を作らなければなりません。今後どのように対応していくかを考えるきっかけが生まれるからです」と言う。

 乳がんの治療において、乳房を温存するかどうかは、
*乳房のどの部位にがんができたか
*どのくらいの大きさ、広がり、深さがあるか
*細胞にはどんな特性があるか、それを切除することでどのような形態の変化が起こるか
といった観点で検討される。

 さらに、患者の乳房に対する思い(温存療法による乳房の変形について、どのくらいまで許容できるかなど)や人生観も考慮していく。

 乳がんを切除するより、乳房の形態をきれいに温存するほうが手術の難易度は高くなるという。特に、乳房の下部にがんがある場合は、がんの切除後、摘出部位がへこんでしまう可能性が高いため、丸みのある部分がえぐれてしまったり、両側から寄せてもひきつってしまったりするなど、全体的に形を整えにくくなる。このため、矢形教授は「乳房の下部にがんがある場合は、乳房温存手術を勧めるかどうか、より慎重に検討します」と言う。

 もし、乳房温存手術による乳房のできあがりに違和感が残る場合は、もう一度、補正手術をすることができる。また、「乳房を全摘して、同時再建をする」という選択肢もある。ただし、後者の場合は、温存療法の術後の放射線治療を受ける前に相談をしたほうがいい。放射線治療によって皮膚の機能が損なわれ硬くなり、乳房再建時、きれいに仕上がりにくくなったり、合併症の可能性が高くなったりするからだ。

 乳房の再建には乳房に人工物を入れず体の組織(腹部や背部等)を移植する「自家組織再建」と、乳房の形成にインプラント(シリコン製人工乳房)を用いる「人工乳房再建」の2種類あるが、いずれも健康保険が適用される。

がんの根治性と整容性のジレンマ

 がんに対する根治性と乳房のアピアランス(整容性)は相反する。切除範囲が大きくなれば再発率を抑えられる可能性が高まるが、一方、乳房は変形しやすくなる。乳房のきれいさにこだわるあまり、がんの根治性とのジレンマは起こらないのか。

 矢形教授は「もっとも重要なことは『どのくらいの範囲で、がんと周辺組織を取ればいいか』です」と話す。このため、乳腺外科医は手術前、周到に準備をする。マンモグラフィ、超音波検査、MRIで乳房内のがんの広がりや深さを判断し、手術時の仰向けの体位で病変の範囲と切除範囲をマーキングして正確に切除していく。

『整容性からみた乳房温存治療ハンドブック』

 矢形教授は、2008年~10年、全国の乳腺外科医と形成外科医を集めて「乳房温存治療の整容性」に関する研究会を開き、その成果を『整容性からみた乳房温存治療ハンドブック』(メディカル・サイエンス・インターナショナル社2010年)にまとめた(写真)。当時、オンコプラスティックサージェリーの重要性は認識されていたが、具体的な技術を教える本がなく、それぞれの医師が工夫していた知見を集めて広めた。

 このように乳房のアピアランスに関する意識が高まってきたとは言え、矢形教授の主観ではこだわる医師は「全国の2割程度」と言う。医師を探したいときは、日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会のホームページの「一般の皆様」で紹介されている。
http://jopbs.umin.jp/general/

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