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レポート

2018/11/13

第32回日本癌学会市民公開講座より(第1回)

がんゲノム医療の時代がやってきた

中西美荷=医学ライター

治療標的となる遺伝子や治療選択に有用な遺伝子を「遺伝子パネル」で検査

 がんゲノム医療では、人の全ての遺伝子(ヒトゲノム)を調べるわけではない。がん関連遺伝子のうち、現在使える分子標的薬の治療標的となるような遺伝子異常や治療選択に有益な遺伝子異常を有する「アクショナブル遺伝子」を選んで検査する。それらの遺伝子をリストアップしたものは「遺伝子パネル」と呼ばれ、大阪大学で採用しているパネルは46個の遺伝子から成る。

 この遺伝子パネル検査で「アクショナブル遺伝子」の異常が見つかった場合、保険適応の分子標的薬剤があれば、その薬剤で治療を行う。また保険適応されていない場合でも、企業治験や医師主導治験、先進医療B、臨床試験といった試験が行われている場合は、それに紹介する。

 いろいろながんのゲノム解析から、遺伝子変異の数は、がんの種類によって異なることがわかってきている。例えば大腸癌では平均66個、胃がんは53個、肺がんは147個(非小細胞肺癌)、163個(小細胞肺がん)と、非常に数多くの遺伝子変異が存在する。肺がんに遺伝子変異が多いのは、明らかな発がん因子であるタバコがあるためだという。小児がんでは遺伝子変異は非常に少ない。

 そして「アクショナブル遺伝子」異常の割合も、がんの種類によって一様ではない。谷内田氏によれば、たとえば日本人に多い大腸がんでは約50%でアクショナブル遺伝子の異常が見つかるが、残念なことにやはり日本人に多い胃がんでは、その頻度がとても低いのだという。またすい臓がんでは、KRAS、CDKN2A/p16、TP53、SMADS4/DPC4という4つの遺伝子異常のみが高頻度で認められるのが特徴で、いずれの遺伝子も「アクショナブル遺伝子」でないことが、難治がんである理由のひとつだという。

 谷内田氏は、「現時点では、この検査を受けても、分子標的薬剤に結びつくがん関連遺伝子の異常が見つかる割合は必ずしも高くないことと、分子標的薬剤にも副作用があることは理解しておいてほしい」と述べた。

先進医療となったことで費用負担は軽減

 日本では、現在、3つのがん遺伝子パネル検査が先進医療として認められている。114個の遺伝子を搭載する国立がん研究センターのパネルは今年の4月に、950を超える遺伝子から成る東京大学のパネルは8月に、そして大阪大学のパネル検査は10月1日に開始された。谷内田氏は、「先進医療として受けるためには一定の要件があるが、がん遺伝子パネル検査は個別化医療をより精密、より効率的に行うことを可能にする」と強調した。また、がん遺伝子パネル検査を自由診療(全額患者負担)で行った場合、それ以降の検査、治療の全てが自由診療となってしまうが、先進医療では、この検査自体の費用は発生するものの、それ以外の検査や治療を保険診療として受けることができるというメリットもある。さらに、来年度以降は保険収載も想定されているという。

 最後に谷内田氏は、大阪大学の祖である緒方洪庵の「人のために生活をして己のため生活せざるを医業の本髄とす。安逸を思はず名利を顧みず唯己をすてて人を救わんことを希うべし」との言葉を引用し、「医者の思いは、時代が変わっても変わらない。がんゲノム医療は始まったばかりだが、我々はがんゲノムという情報を駆使しながら、患者さんとともにがんと戦っていきたいと考えている」と述べて講演を終えた。

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