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レポート

2018/11/13

第32回日本癌学会市民公開講座より(第1回)

がんゲノム医療の時代がやってきた

中西美荷=医学ライター

 最新のがん治療について情報を得ようとしたとき、遺伝子、ゲノム、免疫、がん幹細胞といった言葉を目にすることも多い。それらは何を意味するのだろうか。そして今後、がん治療はどのような方向に進んでいくのか。

 日本癌学会学術総会に合わせて、大阪で9月29日に開催された第32回日本癌学会市民公開講座では、「近未来のがん治療を知りたい!最新がん治療の実際」をテーマに、第一線で活躍する専門家3名が講演した。その概要を、3回に分けてレポートする。1回目は、がんの個別化医療について。


 「がんは遺伝子の病気である」。大阪大学大学院医学系研究科医学専攻 ゲノム生物学講座・がんゲノム情報学教授の谷内田真一氏によれば、これは若き日のBert Vogelstein氏の言葉であり、20世紀最大の発見のひとつとされている。そしてがんは1個の遺伝子異常で起こるものではなく、長い年月を経て正常細胞の遺伝子に多くの遺伝子異常が蓄積されることによって起こるという。同じがんであっても、患者ごとに異なるがん関連遺伝子の異常をみつけて治療に役立てようとする「がんゲノム医療」は、がんに対する新たな時代の個別化治療として期待されている。

 では、遺伝子とは何か。ゲノムとは何か。そしてがん個別化治療の実際とはどのようなものか?谷内田氏は「あなたにあったがん治療〜がんの個別化医療とは?」と題して講演した。

アクセルやブレーキの働きをする遺伝子が壊れて暴走する

 遺伝子の本体はデオキシリボ核酸(DNA)という物質で、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)という4つの塩基の配列の違いによって、どんなアミノ酸、タンパク質を作るのかといった遺伝情報を記録している。塩基配列は暗号のようなものであり、細胞の核内にある染色体という箱の中に、この遺伝情報がしまわれていると考えると理解しやすい。そして染色体に存在する全てのDNA(遺伝情報)を合わせた命の設計図を「ゲノム」と呼ぶ。

 遺伝子の塩基配列は、人が生まれつき全身の細胞に持っているものと、腫瘍(がん)細胞だけが持っているものに分けることができる。生まれつき持っている遺伝子には、お酒が強い弱いというように病的でない性質を決めるものもあれば、病気と関連しているものもある。たとえばBRCA1という遺伝子に変異があると乳がんになりやすいことが知られていて、この遺伝子変異をもつ俳優のアンジェリーナ・ジョリーさんが予防的に乳房を切除したというのは有名な話だ。一方、腫瘍細胞だけが持っている遺伝子変異は体細胞変異と呼ばれ、がん医療の世界でいう遺伝子解析というのは、主にこの体細胞変異の解析を指す。

 がん関連遺伝子には、活性化することによってがんを誘導するアクセルの役割をしている「がん遺伝子(オンコジーン)」と、もともとがんを抑制するブレーキの役割をしているが、部分的または完全に不活性化するとがんが発達する確率が増加する「がん抑制遺伝子」がある。谷内田氏は、「がんは、遺伝子のアクセルやブレーキの働きをする遺伝子が壊れ、車が暴走していくように無秩序に細胞が増殖する病気だ」と説明した。

 がんの遺伝子異常には、塩基配列の異常(突然変異)、遺伝子増幅、欠失、再編成など、さまざまな種類がある。代表的なものは塩基配列の異常で、もっとも有名で高頻度で認められるのは、がん抑制遺伝子TP53の塩基配列の異常である。たった1個の暗号の違いによって、作られるアミノ酸が変わり、がん抑制の働きを持たない、もしくは弱い異常なタンパクができてしまう。

 また染色体再編成というのは、遺伝子の箱である染色体が入れ替わるような変化で、箱が抜け落ちたり(欠失)、箱が2倍になったり(重複)、箱の並び方が反対になったり(逆位)、違うところに飛んでしまったり(転座、転位)することによって、遺伝子の数が異常になったり、融合遺伝子が作られたりする。

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