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レポート

2018/11/6

第60回日本婦人科腫瘍学会学術講演会・ワークショップより

遺伝性腫瘍のための遺伝学的検査を受けるときは

検査には遺伝カウンセリングが不可欠

八倉巻尚子=医学ライター

 乳がんや卵巣がんの中には遺伝性の遺伝子変異が原因で発症するがんがあり、このようながんは「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれている。HBOCの診断には遺伝子を調べる検査が行われる。また最近ではがん治療のための遺伝子検査が行われることが多くなっており、その中で偶然に遺伝性の遺伝子変異が見つかることもある。

 9月に京都市で開催された第60回日本婦人科腫瘍学会学術講演会ワークショップ「HBOCの現状と展望」で、四国がんセンター婦人科の竹原和宏氏は、婦人科診療においてHBOCカウンセリングをどのように行えばよいのかという観点から、遺伝子の検査と遺伝カウンセリングについて説明した。


どのような患者がBRCA遺伝学的検査を受けるか

 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)は、遺伝にかかわる生殖細胞系列にあるBRCA1とBRCA2という遺伝子の変異に起因する家族性腫瘍(遺伝性腫瘍)である。BRCAはがん抑制遺伝子の1つで、この遺伝子に変異があると、もともと人の体に備わっていた遺伝子修復機能に異常が起こり、細胞のがん化につながる。BRCA遺伝子の検査を行って、遺伝子変異が見つかった場合はHBOCと診断される。

 なお、このように遺伝にかかわる生殖細胞系列の遺伝子検査は、特に「遺伝学的検査」といわれ、「遺伝カウンセリングのプロセスの中で実施されるのが原則である」と竹原氏は説明した。一方、遺伝子検査は、「病原体の核酸や、遺伝と関係のない後天的な遺伝子の変化を調べる検査」のことで、例えばウイルスのDNA検査や体細胞の遺伝子を調べるときの検査のことである。

 「遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き 2017年版」によれば、HBOC診療では「BRCA遺伝学的検査を考慮もしくは希望する」患者さんに遺伝カウンセリングを行ない、その上でBRCA遺伝学的検査を行って、遺伝子変異の有無を確認する。

 ではどういった患者さんにBRCA遺伝学的検査を考慮するのか。まず、検査に関する情報を提供する患者さんが「拾い上げ基準」を参考に選択される。「拾い上げ基準」は国内外で検討され、米国NCCNガイドライン、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)、国際産科婦人科連合(FIGO)などが独自にリストを設けている。HBOCに関わる医療関係者の研究団体である日本HBOCコンソーシアムでは、母方と父方の家系に乳がんや卵巣がんを発症した人がいるかどうかなど、家族歴を尋ねる患者向けの問診票を作成している。また患者や血縁者が変異を持っている確率を算出する「リスク予測ツール」を活用してリスク判定し、リスクの高い人にBRCA遺伝学的検査についての情報を提供することもある。

婦人科がんは家族歴に関係なくBRCA遺伝学的検査が検討される

 「昨今、卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんでは、BRCAに関連して発生する場合が比較的多いことがわかってきた」と竹原氏は言う。家族歴がない散発性卵巣がんにおいてBRCA生殖細胞系列変異の頻度は、組織型別に、漿液性がんでは5〜18%、類内膜がんで0〜13%、明細胞がんで0〜13%といわれている。また他の遺伝性腫瘍に比べて、特に発症年齢は若年というわけではなく、「BRCA生殖細胞系列変異のある卵巣がんの30〜40%は、明らかな家族歴がないこともわかってきた」。

 そのため上述の手引きでは、「すべての卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者には家族歴に関係なくBRCA遺伝学的検査を考慮してもよい」という推奨がなされている。竹原氏も、これらのがんを治療する場合は「HBOCの観点から、遺伝カウンセリングを必ず念頭において治療に携わることが必要になっている」と話した。

 さらに最近では、遺伝性腫瘍に効果がある薬剤、例えばPARP(ポリADP-リボースポリメラーゼ)阻害薬が使用できるようになっている。乳がんではPARP阻害薬の効果を予測するためのコンパニオン診断としてBRCA遺伝学的検査を行って、変異がある人にPARP阻害薬が使われる。なお現時点で、卵巣がんにおいては、PARP阻害薬の1つであるオラパリブはBRCA遺伝子変異の有無にかかわらず、プラチナ感受性再発卵巣がんの治療薬となっている。

 また、がん治療のための遺伝子検査(クリニカルシークエンス)の中で、二次的に遺伝性腫瘍が疑われる結果が得られる場合がある。「これらは、従来のがん治療の流れの中から、派生的に得られた情報(二次的所見、偶発的所見)であり、こういった場合は遺伝カウンセリングが考慮される状況にある」としている。

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