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レポート

2018/10/16

第16回日本臨床腫瘍学会学術集会・シンポジウムより(第5回・慢性骨髄性白血病)

“無治療寛解”が目標になりつつある慢性骨髄性白血病

基本はTKIの継続、特別な事情がある場合は中止も考慮

八倉巻尚子=医学ライター

イマチニブなどのTKIを中止する研究が進む

 イマチニブにより長期生存を得ることはできたが、白血病幹細胞が死んだわけではなく「治療を中断することは不可能であると考えられてきた」。そうした中、「2010年にフランスから衝撃的な報告がなされた」。イマチニブ中止の前向き試験(STIM試験)で、長期にイマチニブ治療を受けた患者の40%は治療を中止しても再発しないというものだった。さらにオーストラリアの試験(TWISTER試験)でも同様の結果が得られた。

 高橋氏らも国内でイマチニブ中止例の調査を行ったところ、治療を中止しても再発しない「無治療寛解(Treatment Free Remission:TFR)」には、24カ月以上の分子遺伝学的完全寛解(CMR)が必要であることが示された。TKIによる分子遺伝学的な効果はBCR-ABL1遺伝子量で判断される。

 さらに日本成人白血病研究グループ(JALSG)で行った日本版STIM試験(JALSG-STIM213)では、イマチニブの長期治療を受けたCML患者の6割以上で、3年以上のTFRを達成することが証明された。またイマチニブから第2世代TKIのニロチニブに切り替えて2年間投与した後、STIM試験と同じ条件で中止した試験(STAT2)を行ったところ、67.9%の患者で安全にTKIを中止できることが示された。

 この2つの日本の試験では、中止直前の分子遺伝学的寛解の深さが、中止後の再発に最も関係することがわかったという。これは、体内に残る小さながん細胞(微小残存病変:MRD)が検出されないことがTFRの成功には重要である可能性を示している。

 またTFRに至った割合とTKIの投与期間は正の相関を示すことから、投与期間が長いほど、深い寛解を達成すること、つまり「MRDの駆逐に治療期間が寄与するものと考えられた」。一方で、第2世代TKIを最初から投与した試験結果からは、治療期間が半分でもイマチニブと同じくらいのTFRを示すこともわかった。

 さらに、イマチニブ中止のSTIM試験からは、ほとんどの再発例は中止後6-7カ月以内に再発しており、中止前の分子遺伝学的寛解の深さが深い患者ほど、再発までの期間が長いことが示唆され、7カ月以降も再発しないためには、ほぼ増殖能力がなくなるレベルである“sustenance limit”以下にするという考え方も提唱された。「これがほぼ幹細胞が駆逐された状態に近いのかもしれない」と高橋氏は解説した。

TKIを中止しても定期的な分子遺伝学的なモニタリングは重要

 米国のNCCNガイドラインは2017年に、臨床試験以外でTKIを安全に中止するための最低必要条件を示した。3年以上のTKI治療歴があり、深い寛解(BCR-ABL1遺伝子量が国際指数ISで0.01%以下:DMR)が2年以上、TKI抵抗性でないこと、そして中止後の毎月のモニタリングを必須としている。

 日本血液学会「造血器腫瘍 診療ガイドライン」2018年版では、「DMRを達成しMRDが検出されなければTKI中止は勧められるか」というクリニカルクエスチョン(CQ6)に対し、「多くのディスカッションがあり、苦肉の策で2つの推奨が出ている」。1つは、「臨床試験以外ではTKIを中止すべきではない」というもの。もう1つは、エビデンスのレベルは比較的低いが、ガイドライン作成委員の意見が一致したものとして、「特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など)」は「TKI中止を考慮しても良い」となっている。ただし「重要なのは、定期的なBCR-ABL1のモニタリングと、患者さんによる自己中断は避けてほしいということ」と高橋氏は強調した。

 CMLの治療は、急性転化をさせないことが重要な目標であるが、さまざまなTKIが導入され、「TFRがCMLの日常診療の中で、現実的な治療目標となりつつある」と高橋氏。「まだ解決しないといけない問題は多くあるが、臨床家が将来のTFRに向けて行わなければならないことは、偶然TFRが得られればラッキーというのではなく、CMLの初診から全症例でTFRをとりにいくつもりで治療を行うことである。つまり早期に深い寛解を得て、副作用や合併症でQOLを下げることがないようにし、できるだけ短期間でTFRを達成する努力を行うことだと思う」と話した。

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