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レポート

2018/10/16

第16回日本臨床腫瘍学会学術集会・シンポジウムより(第5回・慢性骨髄性白血病)

“無治療寛解”が目標になりつつある慢性骨髄性白血病

基本はTKIの継続、特別な事情がある場合は中止も考慮

八倉巻尚子=医学ライター

 白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫といった血液がんの治療は、従来からの化学療法に加えて分子標的薬が使われるようになり、また最近ではがん免疫療法といった新しい方法も試みられている。さらに網羅的な遺伝子解析によってがんが細分化され、それぞれのタイプに対するプレシジョンメディスン(精密医療)を目指した、治療の層別化も検討されている。

 7月に神戸で開催された第16回日本臨床腫瘍学会学術集会のシンポジウム「造血器腫瘍に対する治療概念の進化」では、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)について、最新治療と今後の方向性が紹介された。5回目となる最後は慢性骨髄性白血病についてレポートする。


 慢性骨髄性白血病(CML)は、赤血球や白血球などのもとになる造血幹細胞に異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が増える病気。ただし急性骨髄性白血病(AML)とはがん化のメカニズムが異なる。シンポジウムの中で、秋田大学血液腎臓膠原病内科の高橋直人氏は、CMLの特徴と治療の歴史、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を用いた最近の治療について解説した。

CML発症のメカニズムと治療の変遷

 CMLではフィラデルフィア染色体と呼ばれる染色体の異常が認められる。「フィラデルフィア染色体は46本あるヒトの染色体のうち、9番染色体と22番染色体が相互転座した結果、新たにできた派生染色体である」と高橋氏は説明した。またこのとき9番染色体にあるABL1 遺伝子と22番染色体にあるBCR 遺伝子で転座が生じてBCR-ABL1 融合遺伝子が作られ、BCR-ABL1 融合遺伝子からはBCR-ABL1チロシンキナーゼが作られる。

 「CMLはフィラデルフィア染色体が造血幹細胞に生じて、BCR-ABL1チロシンキナーゼの制御不能な活性化に起因する」と高橋氏は述べた。さらに「BCR-ABL1 融合遺伝子に加え、分化抑制に関わるがん遺伝子のセカンドヒットによって、“慢性期”から約5年で“急性転化”し、急性転化すると1年以内に致死的な経過をたどる疾患であった」とした。

 CMLという病気の経過は、「広島と長崎への原子爆弾投下の後に発生したCMLの詳細な観察により、発病から早期、急性転化に至るまで、進展の様子が非常に詳しく明らかにされている」。CMLの進展に伴って、好塩基球増加や好中球アルカリフォスファターゼ低下、発症から1年ほどで白血球数1-2万/μLに増加、その後、幼若顆粒球の末梢血出現、血清ビタミンB12の増加、白血球数5万/μLに増加、そして発症後5年ほどで脾臓腫大が見られる。しかし最近では「白血球数1-2万/μLで発見されることが多い」という。

 CML治療の歴史を振り返ると、初めてCML症例が報告されたのが1845年、1960年代にフィラデルフィア染色体が発見され、その後、BCR-ABL1遺伝子の発見があり、BCR-ABL1チロシンキナーゼがCMLの発症に関わることが1990年に明らかになった。そしてBCR-ABL1チロシンキナーゼを特異的に阻害するTKIであるイマチニブが開発された。日本では2001年に使用できるようになり、現在の標準治療となっている。「イマチニブの出現で、CMLに対する骨髄移植も行われなくなった」。それ以降、第2世代TKIのニロチニブダサチニブボスチニブが開発された。

 「CMLはイマチニブを内服することで、90%以上の患者さんの長期予後が約束されている。CMLは適切な診断と治療を行うことで、現在は不治の病ではなくなっている」とした。

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