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レポート

2018/10/23

第3回日本がんサポーティブケア学会学術集会・市民公開講座より

制吐薬の進歩で嘔吐は減ったが吐き気の予防はこれからの課題

医療のエンドユーザーである患者もガイドラインを知っておく必要がある

八倉巻尚子=医学ライター

これからのガイドラインは患者さんの疑問から作られる

 斎藤氏は、日本がんサポーティブケア学会の「CINV部会」の部会長でもある。化学療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)に関する情報を集めて発信し、ガイドラインの患者解説書の作成やデータベース構築に向けて活動している。

 講演の中で斎藤氏は、これからのガイドラインのあり方についても言及した。そもそもガイドラインとは、「医療という商品を購入した際の、取り扱い説明書のようなもの」で、これまでは医療者が利用するものだったが、「医療のエンドユーザーである患者さんも知っておく必要のあるものだと思う」と話した。

 ただし、医療は全てガイドライン通りに行われるわけではなく、「行えるといいなあと思うが」、実際は患者さんの体質の個人差、例えば持病や年齢、さらに仕事、経済状況などの違いがあり、ガイドラインどおりにはならない場面もあると説明した。

 制吐薬に関するガイドラインは、欧米ではMASCCガイドラインが2004年に作成された。日本ではMASCCや米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国のNCCNのガイドラインを参考に、「日本で使用できる薬剤と日本で承認されている用量を考慮し、科学的根拠(エビデンス)と合議(コンセンサス)」に基づいて、「制吐薬適正使用ガイドライン」が2010年に作成された。

 ガイドラインは通常、臨床的な疑問(clinical question:CQ)が提示され、それに答える形で、推奨される治療法が紹介されている。例えば「制吐薬適正使用ガイドライン2015年版」では「がん薬物療法後の急性の悪心・嘔吐をどのように予防するか」(CQ2)の質問に対して、高度リスクの抗がん薬による急性の悪心・嘔吐に対しては、NK1受容体拮抗薬であるアプレピタント(もしくはホスアプレピタント)と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンを併用する、と記載されている。

 これら医療者向けのガイドラインは患者さんや家族にはわかりにくいため、がん領域のガイドラインの中でも、すでに患者向けのガイドラインを用意しているところがある。日本乳癌学会は「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」を発行しており、学会ホームページでも無料で閲覧が可能だ。大腸がんや子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんの患者向けガイドラインもある。

 しかし斎藤氏は、「これからのガイドライン」は、CQではなく、患者さんの疑問(patients’ question:PQ) に答えられるガイドラインはどうだろうかと提案した。患者さんの疑問としては、例えば、薬以外の方法で吐き気や嘔吐は抑えることはできないのか、副作用を抑えると抗がん剤の効き目が落ちるのではないかなどを挙げた。特に患者の主観も含む症状に対する支持療法は、医療者と患者の情報共有がより良い治療効果を生む可能性があるとした。

 PQをベースとしたガイドラインの作成は、具体的には、既存のガイドラインを読みやすい文体にして解説する。一方で患者さんの疑問を拾い上げ、それに対して、これまでの研究結果を系統的に解析する。そして両者を合体させてガイドラインを作成することを提案している。

 「薬剤の開発だけでなく、吐き気のような副作用対策にも、複数の臨床試験の結果が重要で、それらをもとにエキスパート、そして患者さんも含めて、協議して、治療や予防方法の推奨が挙げられていくことが大切だろう」と斎藤氏は話した。

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