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レポート

2018/10/23

第3回日本がんサポーティブケア学会学術集会・市民公開講座より

制吐薬の進歩で嘔吐は減ったが吐き気の予防はこれからの課題

医療のエンドユーザーである患者もガイドラインを知っておく必要がある

八倉巻尚子=医学ライター

 抗がん剤による副作用の中でも特に患者に嫌がられるのが吐き気(悪心)と嘔吐。しかし新しいタイプの制吐薬が使われるようになり、またガイドラインが整備されて予防法が確立してきたことにより、抗がん剤による吐き気と嘔吐は改善しつつある。

 9月に福岡市で開催された第3回日本がんサポーティブケア学会学術集会の市民公開講座「患者はどんな情報を望んでいるか―患者と医療者のコミュニケーションを考える―」で、順天堂大学医学部乳腺・内分泌外科の斎藤光江氏は、「抗がん剤の吐き気は予防ができるの?―ガイドラインを参考に」と題して講演。吐き気と嘔吐の予防法を解説し、さらにこれからのガイドラインのあり方についても触れた。


嘔吐を引き起こす強さに合わせ制吐薬を組み合わせて予防

 抗がん剤のような化学物質が体に入ると、消化管の細胞に刺激が送られ、それが神経伝達物質(セロトニン)を介して脳に伝わり、嘔吐中枢が刺激されて、吐き気や嘔吐をもよおす。さらに「嘔吐は気分で起こることもある」と斎藤氏。5感への刺激、例えば何かを見て、何かを嗅いで、何かの味で、耳障りの音などを聴いて吐いてしまう。あるいは吐いてしまうかもしれないという“予感”で嘔吐してしまうこともある。

 抗がん剤は嘔吐を引き起こす強さによって、「高度」催吐性抗がん剤、「中等度」催吐性抗がん剤、「軽度」催吐性抗がん剤、「最小度」催吐性抗がん剤の4つに主に分類されている。「高度」は対策を講じないと90%以上の人が吐き気や嘔吐を引き起こすもの、「中等度」は30-90%の人が、「軽度」は10-30%の人が、「最小度」は10%未満の人が吐き気や嘔吐を引き起こすものと定義されている。

 乳がんの治療に使われるAC療法(アンスラサイクリン、シクロホスファミドの併用)、肺がんや卵巣がんなどで使われるプラチナ製剤は、「高度」催吐性抗がん剤に位置づけられている。

 最初の制吐薬は精神安定剤だったというが、1980年代にはドパミン受容体拮抗薬やステロイドが使われ、その後、第一世代セロトニン受容体拮抗薬(5-HT3受容体拮抗薬)が登場し、2009年にニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬が、2010年には第二世代セロトニン受容体拮抗薬が使用できるようになった。セロトニン受容体拮抗薬には一般名で「○○セトロン」という名前がついている。

 現在、吐き気や嘔吐に対する予防法は「制吐薬適正使用ガイドライン」あるいはそのもとになったMASCC(国際癌サポーティブケア学会)ガイドラインに基づいて行われる。「高度」催吐性抗がん剤を使用するときには、セロトニン受容体拮抗薬とステロイド(デキサメタゾン)に加え、NK1受容体拮抗薬の3剤が使われる。「中等度」催吐性抗がん剤を使うときには、セロトニン受容体拮抗薬とステロイドの2剤が使われる。「軽度」にはセロトニン受容体拮抗薬またはステロイドまたはドパミン受容体拮抗薬のいずれかを使い、「最小度」はルーチンの予防的対処なし、となっている。

 プラチナ製剤などの「高度」催吐性抗がん剤の場合、かつては「たくさんの人が洗面器を持って」吐くことが多かったが、新しいタイプの制吐薬が出て、またガイドラインに基づいた予防を行うようになって、「9割がた吐いていたものが、今や9割がた吐かなくなった」と斎藤氏は話した。

 「しかし、吐き気は他人にわかりにくい」ので、医療者にとってもその程度の評価が難しく、改善したかどうかがわかりにくいという。そのため斎藤氏は「吐き気への対策はこれからの課題である」と話した。また予防で防ぎきれなかった嘔吐に対する治療も今後の課題であるとした。

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