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レポート

2018/10/2

第16回日本臨床腫瘍学会学術集会・シンポジウムより(第3回・骨髄異形成症候群)

予後リスクで治療アプローチが異なる骨髄異形成症候群

次世代のDNAメチル化阻害薬やがん免疫療法、キナーゼ阻害薬の開発進む

八倉巻尚子=医学ライター

 白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫といった血液がんの治療は、従来からの化学療法に加えて分子標的薬が使われるようになり、また最近ではがん免疫療法といった新しい方法も試みられている。さらに網羅的な遺伝子解析によってがんが細分化され、それぞれのタイプに対するプレシジョンメディスン(精密医療)を目指した、治療の層別化も検討されている。

 7月に神戸で開催された第16回日本臨床腫瘍学会学術集会のシンポジウム「造血器腫瘍に対する治療概念の進化」では、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)について、最新治療と今後の方向性が紹介された。3回目は骨髄異形成症候群についてレポートする。


 骨髄異形成症候群(MDS)は、赤血球などの血液細胞のもとになる造血幹細胞に異常が起こった病気。異常な造血幹細胞からつくられた赤血球、白血球、血小板の3つの系統で、それぞれ機能異常や形態異常が生じる。そのため貧血や出血、感染症とそれに伴う発熱といった症状が現れる。抗がん剤や放射線治療を受けた後にMDSが起こることもあり、またMDSが進行すると、急性骨髄性白血病(AML)に移行することがある。シンポジウムではがん研究会有明病院血液腫瘍科の照井康仁氏が、MDSの分類と治療、最近の新薬開発について解説した。

細胞の特徴から予後を予測してリスク分類

 米国の統計によると、MDSの発症頻度は10万人あたり3.7-4.8人で、患者の年齢中央値は70歳。75歳以上では10万人あたり34-47人と、「高齢者に多い疾患であり、高齢化社会においてMDSは増えてくるだろう」と照井氏は説明した。

 MDSは血球の減少や形態異常を伴う病気だが、単一の病気ではなく、さまざまな病気の集まりの「症候群」と考えられている。病型分類はWHO(世界保健機構)分類に基づいて行われるが、MDSという病気の捉え方が病態の解明に伴って変化しており、WHO分類第4版(2008年)が2016年に改訂された。

 その中で、MDSの病型分類は、血球の形態異常を示す「異形成度」と未熟な血液細胞(芽球)の割合に主に依存しており「特定の血球減少は重要な要素ではない」「重大な形態的異形成を示す系統が血球減少を伴うとは限らない」(照井氏)ため、成人において「不応性貧血」「不応性血球減少症」という記載から「骨髄異形成症候群(MDS)」に統一された。一方で、骨髄所見の条件からは、特徴の1つであった「異形成度」が削除された。それまでMDSの基準は10%以上の異形成とされたが、健常人や非腫瘍性の血球減少症でも起こり得ることがわかってきたためだ。

 2016年改訂版における病型分類は、1系統の異形成を伴うMDS、多系統の異形成を伴うMDS、環状鉄芽球を伴うMDS、5番染色体長腕(5q)単独欠失を伴うMDS、芽球増加を伴うMDS、分類不能型MDS、小児の不応性血球減少症、となっている。

 なおMDSは芽球が骨髄中に20%未満までをいい、20%を超えるとAMLに分類される。またMDSの半分以上には染色体異常が認められ、最近では遺伝子変異も数多く見つかっている。

 MDSはさまざまな病態を含むため、治療方針の決定には診断と病型分類に加え、予後予測も重要とされる。MDSの予後予測には、国際予後判定システム(IPSS)が広く使われている。IPSSは骨髄中の芽球の割合、核型(染色体異常)、血球減少の系統数という3つの予後因子を用いてスコア化し、4段階にリスク分類する(Low、Intermediate-1、Intermediate-2、High)。最近では改訂版IPSS(IPSS-R)も使われている。これは5つの予後因子(骨髄中の芽球の割合、核型、ヘモグロビン値、血小板数、好中球数)を用いて、5段階にリスク分類する(Very low、Low、Intermediate 、High、Very high)。リスクが低いほど、生存期間中央値は長く、AMLへの移行までの期間も長いことが確認されている。

 日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン」(2018年)では、MDSの治療は低リスクと高リスクに分けられる。IPSSにおけるLow、Intermediate-1を低リスク、Intermediate-2、Highを高リスクとし、IPSS-RではVery low、Lowを低リスク、High、Very highを高リスクとしている。

 低リスクの場合は臨床症状の有無で分けられ、臨床症状がない場合は経過観察、臨床症状がある場合は免疫抑制療法、サイトカイン療法、蛋白同化ステロイド、また5番染色体長腕(5q)の欠失が見られるときは免疫調整薬のレナリドミドが使われる。高リスクの場合は提供者からの造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植の可否で分けられる。同種移植の適応でない場合はDNAのメチル化を阻害するアザシチジンが使われる。アザシチジンで効果がなく、5q欠失の場合はレナリドミドも候補となる。

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