地固め療法・維持療法で良い状態を保つ
深い奏効が得られると、再発までの期間が延びるが、その良い状態を保つには、地固め療法や維持療法を行って、MRDが極力なくなること(陰性)が望ましい。1000例以上を対象にしたメタ解析で、MRD陰性群はMRD陽性群に比べて、無増悪生存期間(PFS)も全生存期間(OS)も有意に良好だった。
移植非適応の初発多発性骨髄腫を対象とした試験(FIRST)では、レナリドミドと低用量デキサメタゾンによるRd療法を継続投与した群は、Rd療法を18サイクル投与した群に比べて病勢進行および死亡のリスクが減少した。このため「Rd継続治療は移植非適応患者の標準治療の1つになりうると位置付けられている」。また自己造血幹細胞移植(ASCT)を行った患者でも、ASCT後のレナリドミド維持療法はOSを延長することがメタ解析で示されている。
「維持療法によりPFS延長は確実で、おそらくOS改善効果もある」が、治療継続による骨髄抑制や2次がんなどの有害事象、QOLに及ぼす影響、経済的な負担は課題であるとした。そのため「維持療法はどのような患者にメリットがあるか、どの薬剤をどのくらいの期間使うのかをわれわれは明らかにしないといけない」と木崎氏は話した。
再発・難治例への治療アプローチ
初回治療では治療強度がある薬剤を使って腫瘍細胞を減らし、深い奏効を目指す。また地固め療法や維持療法でさらにMRD陰性を目指す。しかしそれでも多発性骨髄腫は治癒が難しい病気であり、いまだ再発することが多い。
再発・難治性の多発性骨髄腫に対しては、免疫調整薬やプロテアソーム阻害薬をはじめ、新薬も次々に開発されている。一般的に、最初の治療でレナリドミドを使った場合は次の治療はボルテゾミブ、最初にボルテゾミブの場合はレナリドミドが次に使われる。
ボルテゾミブで治療を開始して再発・難治性になった患者に対し、レナリドミドを基盤とした併用療法の臨床試験が行われている。プロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブや経口プロテアソーム阻害薬イキサゾミブ、ダラツムマブ、抗体薬のエロツズマブがRd療法との併用で検討され、いずれもRd療法単独に比べて上乗せ効果が示されている。
またレナリドミドから治療を開始して再発・難治性になった患者に対しては、ボルテゾミブを基盤として、カルフィルゾミブ、ダラツムマブ、非選択的ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬パノビノスタット、エロツズマブを併用した試験が実施されている。Vd療法(ボルテゾミブ+低用量デキサメタゾン)に比べ、併用群でPFSは延長している。しかし「レナリドミドを加えた場合よりもPFSは短い傾向がある」。
さらに難治性になって、レナリドミドとボルテゾミブの両方が効かなくなった場合、登場してくるのが、免疫調整薬のポマリドミドである。デキサメタゾンとの併用に加え、ボルテゾミブやカルフィルゾミブ、ダラツムマブ、イキサゾミブとの組み合わせの臨床試験も行われている。
このように、「再発・難治性の多発性骨髄腫には基本的には3剤併用が望ましく、frailな高齢者には減量した3剤併用あるいは2剤併用を考慮する」とした。