2018/09/18
【濾胞性リンパ腫】
腫瘍量によって異なる治療、新しい抗体薬の治療に期待
濾胞性リンパ腫は、悪性リンパ腫全体の20%を占める。基本的に治癒は難しいが、リツキシマブが使われるようになって「予後は改善している」と石澤氏。進行期の濾胞性リンパ腫に対する治療は、症状がない、または軽度の症状の「腫瘍量が小さい」場合と、何らかの症状がある「腫瘍量が大きい」場合にわけて考えられている。
「腫瘍量が小さい」濾胞性リンパ腫の治療は、リツキシマブあるいは待機療法(経過観察)が標準的に行われている。「腫瘍量が小さい」患者を対象に、リツキシマブと待機療法を比較した臨床試験では、リツキシマブによる早期介入で次の治療の開始までの期間が長くなることが示された。しかしこの試験での「腫瘍量が小さい」とした基準が現在では当てはまらないことから、日本で新たにリツキシマブの早期介入を検討する試験(JCOG1411)が行われている。
「腫瘍量が多い」患者では、リツキシマブ併用化学療法(導入療法)を行い、効果があった患者を対象に、その状態を維持するためのリツキシマブの投与(維持療法)と経過観察を比較する試験(PRIMA)が行なわれた。その結果、リツキシマブ維持療法を行ったほうが無増悪生存期間(PFS)は長く、10年間のフォローアップの結果でも良好だった。このため「腫瘍量が多い場合、リツキシマブ併用化学療法とリツキシマブ維持療法が基本な治療になった」。
ところが「それを変えたのがオビヌツズマブである」(石澤氏)。オビヌツズマブはリツキシマブと同様に、B細胞表面のCD20という分子を標的にした分子標的薬で、2018年7月にCD20陽性の濾胞性リンパ腫の治療薬として日本で承認された。その背景となった臨床試験では、治療歴がない濾胞性リンパ腫患者において、オビヌツズマブ併用化学療法による導入療法とオビヌツズマブ維持療法は、リツキシマブを用いた導入療法と維持療法に比べて、PFSを有意に延長することが示されている。そのため今後はオビヌツズマブを用いた導入療法と維持療法が「腫瘍量が多い」場合の標準治療になるとした。