このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2018/08/23

第16回日本臨床腫瘍学会学術集会・教育講演より

分子標的薬による治療が広がる神経内分泌腫瘍

診断技術の進歩で患者数が年々増加

八倉巻尚子=医学ライター

膵・消化管NETに対する薬物療法のアップデート

 膵・消化管NET(G1-3)の治療には、症状緩和や抗腫瘍効果を示すオクトレオチドやランレオチド、腫瘍制御には分子標的薬であるエベロリムスとスニチニブ、細胞障害性抗癌剤のストレプトゾシンが使われる。NEC G3には症状の緩和にオクトレオチドやランレオチド、腫瘍制御には白金系抗癌剤を用いた細胞障害性抗癌剤の併用療法が行われる。

 オクトレオチドLAR(長時間作用型除放性製剤)は、高分化型の中腸(小腸)NETを対象とした第III相試験(PROMID)で有効性が確認された(Rinke A, et al. J Clin Oncol.2009)。ただし、SRSで陽性となった患者が7割強、Ki-67指数2%までの患者が大半を占め、「ほとんどの症例がNET G1」であった。この試験の結果を受けてオクトレオチドLARは消化管NETに保険適用となった。「実際には中腸、主に回腸を対象とした試験であり、日本では直腸にも使用できるが、本当に直腸NETにもソマトスタチンアナログが効くのかどうかは課題ではないか」と伊藤氏は述べた。

 一方、ランレオチドの第III相試験(CLARINET)は、非機能性の膵・消化管NETで中~高分化型を対象に行われた。「Ki-67指数が10%未満、NET G2は入るが、増殖能が低いものが含まれている」。試験の結果、プラセボ(偽薬)に比べて統計学的に有意に高い抗腫瘍効果を示した(Caplin M, et al. N Engl J Med.2014)。

 この試験には日本は参加しておらず、国内でランレオチドの第II相試験が行われた。試験の主要評価項目は投与開始24週後における臨床有益率(CR+PR+持続したSD:CBR)だった。この結果、CBRは64.3%と良好な結果が得られ(Ito T, et al. Invest New Drugs 2017)、28例中16例に腫瘍の縮小効果が認められた。そのため2017年に膵・消化管NETに対してランレオチドが承認された。

 「膵NETに関しては分子標的薬が出て、患者さんに恩恵を与えている」と伊藤氏は言う。膵NETを対象にしたmTOR阻害薬エベロリムスの第III相試験(RADIANT-3)で、エベロリムス群の無増悪生存期間(PFS)が中央値11.0カ月、プラセボ群は4.6カ月、ハザード比0.35、p<0.0001で、エベロリムスによる有効性が示されている(Yao JC, et al. N Engl J Med. 2011)。同時期にスニチニブの第III相試験も行われた。高分化型の膵NETに対して、スニチニブ群のPFS中央値は11.4カ月、プラセボ群は5.5カ月、ハザード比0.418、p=0.0001(Raymond E, et al. N Engl J Med.2011)で、エベロリムスとほぼ同じPFS中央値を示した。

 伊藤氏らが九州大学で治療した膵NET患者78人のデータをまとめたところ、分子標的薬(エベロリムス、スニチニブ)が登場する前と後で予後は大きく異なることが確認された(Lee L, et al. Jpn J Clin Oncol.2015)。分子標的薬登場前の全生存期間(OS)中央値は22.2カ月、登場後は98.8カ月と、大きく延長していた。

 また、「エベロリムスは膵NETに有用であったが、消化管・肺NETに対しては明らかでなかった」。そこで日本人を含む第III相試験(RADIANT-4)が実施された。試験の結果、これもエベロリムス群のPFS中央値11.0カ月、プラセボ群3.9カ月、ハザード比は0.48、p<0.001と、エベロリムス群のほうが有意に良い結果になった(Yao JC, et al. Lancet 2016)。また部位別のサブグループ解析では、直腸に対しても有効性が確認された。「これにより日本人に多い直腸NETの初回治療薬が出てきた」と伊藤氏は話した。しかし良いことばかりではなく、エベロリムスには間質性肺炎を起こしやすいという副作用もあるので注意は必要だ。

 前に触れたように、WHO分類2017年版では膵NETの分類においてNET G3が新たに加わった。それまではKi-67が20%を超すものは全てNEC G3として、白金系抗癌剤(シスプラチンやカルボプラチン)をベースにした併用療法が行われていたが、「高分化型でKi-67が20%を超すNET G3には高分化型の治療を行うことになる」(伊藤氏)。

 膵NETにおける初回の薬物療法の使い分けとしては、増殖速度(Ki-67指数)と腫瘍量で評価し、どちらも低い場合はソマトスタチンアナログを、どちらも高い場合は細胞障害性抗癌剤、その間は分子標的薬が有用ではないかと伊藤氏は話した。そして「分子標的薬が使われる幅は広く、今後は高い効果を期待してエベロリムス+ランレオチドなどの併用療法も検討されるだろう」とした。

この記事を友達に伝える印刷用ページ