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レポート

2018/08/23

第16回日本臨床腫瘍学会学術集会・教育講演より

分子標的薬による治療が広がる神経内分泌腫瘍

診断技術の進歩で患者数が年々増加

八倉巻尚子=医学ライター

細胞の増殖能と分化度によるNETの分類

 NETの予後を左右する因子の1つが、細胞の増殖能を示すKi-67という核内のタンパク質。腫瘍細胞のうちKi-67を発現している細胞の割合(Ki-67指数)が大きいほど予後が悪い。そこで欧州の神経内分泌腫瘍学会(ENETS)や世界保健機関(WHO)がKi-67を用いた病理組織学的分類を行った。Ki-67指数により3段階に分け、増殖能が低いものをグレード1(G1)、増殖能が高いものをグレー3(G3)、その間をグレード2(G2)とした。また細胞の分化の程度によって、高分化型と低分化型とに分けた。

 一般的によく使われているのがWHO分類(2010年版)で、Ki-67指数が2%以下のNET G1と、Ki-67指数が3%から20%のNET G2は高分化型で、悪性度は比較的低い。一方、Ki-67指数が20%超のG3はNEC(神経内分泌癌)と呼ばれ、低分化型で悪性度が高い。ところが研究が進み、Ki-67指数が20%超でも高分化型のものが存在することがわかってきた。そこで最も新しい分類である膵NETのWHO分類(2017年版)では、NET G3というグループ(Ki-67指数は20%超、高分化型)が追加された。またKi-67指数3%未満をG1としている。

 「NET G1/G2/G3とNEC G3では治療が全く異なるので、組織を取って調べることは非常に重要である」と伊藤氏は話した。ただし、「膵NETは不均一性が非常に高い腫瘍で、部位によって増殖能が違う」という問題がある。腫瘍を細かく調べた研究によると、Ki-67指数は部位によって0.4%から8.2%と異なった(Hasegawa T, et al. Endoscopy 2014 / Ito T, et al. J Gastroenterol. 2017)。つまり部位によってはNET G1と診断されることになり、「過小評価されやすい」。そのため、正診率を上げるために腫瘍細胞を500個以上調べることを日本神経内分泌腫瘍学会(JNET)は推奨している。

消化管ホルモンを使った診断と治療

 NETの細胞膜には、脳や消化管から分泌されるペプチドホルモンであるソマトスタチンの受容体が豊富に存在する。ソマトスタチンとソマトスタチン受容体が結合することで、ホルモンの分泌抑制や細胞増殖が抑制されるといわれる。このソマトスタチンに類似した物質を使って、ソマトスタチン受容体が存在する場所を見つけるという画像診断法(ソマトスタチン受容体シンチグラフィ:SRS)がある。ソマトスタチン受容体(SSTR)には5つのサブタイプがあり、膵・消化管NETにはSSTR2とSSTR5、特にNET G1/G2にはSSTR2が多いため、SSTR2が見つかった場合はNET G1/G2と診断される。

 SRSは米国では1994年に承認されているが、日本では2016年に使用できるようになった。ソマトスタチン類似物質にインジウム111という放射性物質を標識として付加し、それを目印にソマトスタチン受容体の位置を画像化する。「SRSの強みは骨転移とリンパ節転移の描出に優れていること。CTでは見えなかったが、SRSで骨転移が見つかったこともある」と伊藤氏は話した。なお、欧米ではより感度が高い放射線物質、ガリウム68を標識として使うSRSに変わりつつあるという。

 また治療にも、ソマトスタチンの働きを利用した薬剤が使われている。ソマトスタチンアナログ製剤であるオクトレオチドやランレオチドは、ソマトスタチン受容体と結合して、症状の緩和や抗腫瘍効果を示す。

 海外ではペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)も行なわれている。PRRTはソマトスタチン類似物質と放射性物質からなる薬剤を投与することで、ソマトスタチン受容体を発現する腫瘍細胞を内部からの放射線照射で破壊する治療法。ルテチウム177-DOTATATEという薬剤を用いたPRRTとオクトレオチドの併用はオクトレオチド単独よりも有効であることが、中腸NETを対象とした第III相試験(NETTER-1)で示されている。日本でも現在、PRRTの臨床試験が進められている。

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