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レポート

2018/8/23

第16回日本臨床腫瘍学会学術集会・教育講演より

分子標的薬による治療が広がる神経内分泌腫瘍

診断技術の進歩で患者数が年々増加

八倉巻尚子=医学ライター

 神経内分泌腫瘍(NET)は全身にある神経内分泌細胞にできる腫瘍のことで、小腸や大腸などの消化管、膵臓、肺に多く見られる。まれな病気といわれてきたが、NETという病気の概念が定着し、検診の普及や診断法の進歩も相まって、患者は年々増加している。2011年に亡くなった米Apple社CEOのスティーブ・ジョブス氏がNETの診断を受けていたことで、この病気が知られるようになったともいわれる。治療には外科療法や薬物療法が行われるが、腫瘍細胞の特定の分子をターゲットとした分子標的薬が使われるようになり、NET患者の予後は良くなってきている。

 第16回日本臨床腫瘍学会学術集会の教育講演「膵・消化管神経内分泌腫瘍のWHO分類の改訂と最新の薬物療法」では、国際医療福祉大学・福岡山王病院神経内分泌腫瘍センターの伊藤鉄英氏が、NETの疫学、最近の診断法や薬物療法について解説した。


膵・消化管NETの患者は5年間で1.3〜1.8倍に

 膵臓と消化管にできたNETを対象に行われた全国疫学調査によれば、膵臓のNET(膵NET)により治療を受けた年間受療者数は2005年から2010年の5年間で1.3倍に増えている(Ito T, et al. J Gastroenterol. 2010 /2015)。膵NETの有病患者数は10万人あたり2005年は2.23人だったが、2010年には2.69人に増加した。消化管のNET(消化管NET)も2005年から2010年で1.8倍に増加。伊藤氏は「検診の機会が増えたことや積極的に生検をするようになり増えたのだろう」とした。

 NETでは低血糖や下痢などのホルモン症状があるものを機能性腫瘍、ホルモン症状がないものを非機能性腫瘍といい、非機能性腫瘍は自覚症状がないため、病気の発見が遅れることが多かった。しかし、2005年調査で膵NET受療者数全体の45%だった非機能性腫瘍が、2010年には65%に増加した。「これはNETの疾患概念が浸透して、日常診療で鑑別診断がされるようになったこと、超音波内視鏡を用いて組織や細胞を調べる検査(生検)ができるようになり、小さなNETでも診断ができるようになったため」と伊藤氏は説明した。

 消化管NETは部位によって3つ(前腸、中腸、後腸)に分けられており、日本人に多いのは後腸(直腸、結腸)のNETで特に直腸での発生頻度が高い。一方、欧米では中腸(空腸、回腸、虫垂)のNETが多いといわれる。

 最初にNETが発生した部位によって予後も異なる。日本人に多い直腸や膵臓のNETは比較的予後が悪いグループに入っている(Yao JC, et al. J Clin Oncol. 2008)。ただし、最近の調査によると、「治療に分子標的薬が入ってきて、膵NET患者の生存期間の中央値は長くなっている。直腸についても今後延びてくる可能性がある」と伊藤氏は解説した(Dasari A, et al. JAMA Oncol. 2017)。

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