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レポート

2018/6/27

第26回日本乳癌学会学術総会・患者セミナーより(第4回)

HER2陽性乳癌の術前・術後治療は化学療法+2種類の抗HER2薬に期待

化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブが使われる可能性

八倉巻尚子=医学ライター

術後治療でもペルツズマブの併用が期待される

 術後治療でも現在行われているのは、化学療法に加えてトラスツズマブを1年間投与する治療法である。これまでの複数の試験データから、トラスツズマブの併用で再発リスクを約40%下げ、死亡のリスクを約35%下げることがわかっているが、心不全の発生率は約2%高くなるという。

 また「トラスツズマブ1年投与には限界もある」。トラスツズマブ術後治療の臨床試験(HERA)の11年間の結果から、術後1年投与と術後2年投与では再発割合に違いがなかった(Cameron D, et al. Lancet 2017)。さらに「長期間観察すると、4人に1人は再発してくるという現実がある」と永井氏は述べた。

 そのため、化学療法に他の抗HER2薬を加える、あるいは化学療法に2種類の抗HER2薬を加える、さらに標準治療の後に他の抗HER2薬を投与する治療法が検討された。その1つは、ペルツズマブを用いた試験であり、標準治療である「化学療法+トラスツズマブ」にペルツズマブ1年投与を加える治療が試みられた(APHINITY試験)。この試験には日本も参加している。
 
 昨年途中経過が報告され、ペルツズマブ追加で無再発割合はやや改善することが示された(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2017)。「HERA試験のトラスツズマブの結果と比べても差は小さいが、科学的には差が認められた」。またリンパ節転移のある場合とない場合に分けると、リンパ節転移がある場合は2群間に統計学的に有意な違いがあったが、リンパ節転移がない場合は違いが見られなかった。

 ペルツズマブの術後1年投与における副作用は、皮疹の頻度が5.5%増え、重度の下痢(グレード3以上)が6.1%増えるが、化学療法終了後のグレード3以上の下痢は0.5%であり、心毒性の頻度は低かった。

 ペルツズマブの術前・術後治療については「乳癌診療ガイドライン」2018年版でも触れている。まだデータが限られているため、「今後の重要な課題」という位置付けだが、「HER2陽性乳癌の周術期治療にペルツズマブを併用することは推奨されるか?」(FQ5)という質問項目が設定され、これに対して「再発リスクの高い症例でのペルツズマブ併用療法の有用性が示された」と記載されている。ただし観察期間がまだ短いので、「全生存期間の延長効果は今のところ明らかではない」とも書かれている。

 別の治療法としては、標準治療の後にneratinib(ネラチニブ)という他の抗HER2薬を投与する方法が検討されている。neratinibはHER1、HER2、HER4を不可逆的に阻害する経口のチロシンキナーゼ阻害薬で、日本では承認されていない。

 手術をして、「化学療法+トラスツズマブ」による術後治療が終わった患者を対象に、neratinibあるいはプラセボ(偽薬)を投与する試験が行われた。その結果、プラセボ群に比べてneratinib群の無再発の割合は5年で2.5%改善した(Martin M, et al. Lancet Oncol. 2017)。ホルモン受容体陽性と陰性に分けると、ホルモン受容体陽性では2群の差は顕著だが、陰性では差がなかった。副作用は、治療の中止や休薬が必要なグレード3/4の下痢が4割に認められた。「下痢の頻度が高いのが1つの問題点だが、他の副作用は2群で差がなかった」(永井氏)。

 したがって、「最新の術後治療として、化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブ、あるいは化学療法+トラスツズマブの後にneratinibを投与することによって、再発率を下げることができる」と永井氏は話した。

 ペルツズマブの術前治療は米国で2013年に迅速承認され、欧州では2015年に承認されている。ペルツズマブの術後治療は欧州で2017年8月に承認申請、米国では2017年12月に再発高リスクの術後治療で承認され、さらに術前治療でも通常承認された。日本では2017年10月に「HER2陽性の乳癌における補助化学療法」で承認申請をしている。「近いうちに日常診療にこの治療が入ってくるだろう」と永井氏は話す。neratinibの術後治療は米国で2017年に承認され、欧州では再審査中の状況だ。

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