2018/06/20
一部の患者さんでは効果が持続する免疫チェックポイント阻害薬
トリプルネガティブ乳癌には免疫チェックポイント阻害薬も期待されている。松本氏は「みんなに効くわけではないが、効果が出た場合、一部の患者さんではその効果が極めて長く、5年あるいは10年持続する可能性がある」と話した。また化学療法のような副作用(脱毛、吐き気など)が少ないという特徴もある。しかし自己免疫疾患のような独特の副作用はあり、また極めて高額な治療でもある。
皮膚の癌である悪性黒色腫では効果が10年間、肺癌でも5年間持続した患者さんが確認されている。乳癌においてはまだ長期のデータはないが、抗PD-1抗体薬のペムブロリズマブでは効果が期待される特定の患者(PD-L1の発現が1%以上)に限っても実際に効果があるのは最大で20%程度、抗PD-L1抗体薬のアベルマブでは全患者で10%を切る。
したがって単剤ではなく、化学療法や分子標的薬との併用療法が注目されており、現在、幾つもの治験が実施されている。たとえば、再発後初回治療の患者さんを対象に、抗PD-1抗体薬(ニボルマブ)と分子標的薬(ベバシズマブ)、化学療法(パクリタキセル)を併用する第II相試験(WJOG9917B)が医師主導治験として進行中である。
このように「新しい治療は治験を通じて行うことが多いが、治験にはさまざまな基準があり、参加できないこともある」。基準には「初回治療の患者さんが対象」という試験もあるが、そのタイミングを過ぎてから、セカンドオピニオンで相談に来る人のほうが多いという。そのため「がんと診断されたら、“標準治療”と“今参加できる可能性のある臨床試験”を同時に確認することが当たり前になればと思っている」と松本氏は話した。そして、臨床試験や治験を探すには、国立がん研究センターの「がん情報サービス」とPMDA(医薬品医療機器総合機構)の拡大治験(人道的見地から実施される治験について)の情報ページを参照してほしいとした。