このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2018/06/11

第26回日本乳癌学会学術総会・患者セミナーより(第2回)

目に見えない光を使う放射線療法で根治性を損なわず乳房も諦めない

放射線療法は局所再発と全死亡率を改善、乳房再建後の照射・照射後の乳房再建も可能

八倉巻尚子=医学ライター

脳転移に対する全脳照射と定位放射線療法は利点と欠点を理解して使い分け

 脳転移に対する放射線療法には、脳全体に放射線をかける全脳照射と、 ピンポイントに照射する定位放射線療法がある。定位放射線療法の中には、ガンマナイフ、Xナイフ、サイバーナイフといった方法があり、できるだけ正常脳へはあたらないようにする工夫がされ、基本的には1回または数回で治療が終わる。また定位放射線療法では各種装置によって特徴はあるものの、効果は同様であり、「どちらがいいかと、あまり悩まないほうがいい」と山内氏は話した。

 全脳照射と定位放射線療法の使い分けについては、全脳照射は多発している場合や腫瘍が大きい場合が適しており、約7割の患者さんで症状がやわらぐという。また全脳照射では脱毛は必発だが、永久脱毛ではないので、「3カ月位経つと少しずつはえてくる」と山内氏は話した。ただし、「全員に起こるわけではない」が、認知機能低下が1年以降で起きてくることや、白質脳症といった正常な脳のダメージが起こることもあり、基本的に1回しかできないという欠点がある。これに対し、1回の線量を減らして合併症を減らす試みがされている。

 一方、定位放射線療法は、転移の数が少ない(4個まで)場合、ときには5個以上でも行うが、腫瘍が小さい場合が適しており、全脳照射後でも可能である。ただ、ピンポイントで照射するため、それ以外のところからの脳内再発率が高い。定位放射線療法では認知機能は温存され、脱毛がないが、ピンポイント照射もたくさん当てれば全脳照射に匹敵する副作用が起こる。そのため山内氏は「利点と欠点を理解して、医師と相談して受けてほしい」と話した。

早めの放射線療法で骨転移による痛みを緩和

 骨転移に対する放射線療法は痛みを緩和するために行われる。これまでは3グレイ×10回の2週間程度の治療が多かったが、痛みを緩和する効果は8グレイ×1回でも十分であることがわかってきたという。再照射も可能であり、「骨破壊が少ない転移の場合には1回の照射方法は有効で簡便である」と話した。

 骨転移における痛みには、基本的に鎮痛薬がWHO3段階除痛ラダーに従って選択して使用される。放射線療法についても、痛みが出始めたときや痛みが増強したときなど、さまざまなタイミングで実施することができるが、痛みのコントロールのためには「早めに考慮したほうがいいと思う」と山内氏は勧めた。

寡分割照射には50グレイの壁

 もう1つの話題として、寡分割照射が取り上げられた。乳癌診療ガイドラインには、寡分割照射に関して、「全乳房照射において通常分割照射と同等の治療として寡分割照射は勧められるか?」(CQ1)という質問項目がある。

 全乳房照射の通常分割照射では5週間くらいかけて照射が行われる。総線量は45-50.4Gy(グレイ)で、日本のほとんどの施設が50Gy/25回で実施しているという。それに対し、カナダやイギリスから1回線量を増やして治療回数を減らす寡分割照射が報告されている。治療効果は通常分割照射に劣らず、「これまでより1週間ほど短い治療ですむので、通院にかかる時間や費用が節約できるというメリットがある」。そのためガイドラインでは、「50歳以上、乳房温存手術後のpT1-2N0、全身化学療法を行っていない、乳癌の患者では強く勧められる」としている。

 ただし生命保険やがん保険の契約で、放射線療法を行った場合の保険金の給付は総線量が50Gy以上という条件がついていることがある。「医師が50 Gy以上の線量に相当することを記載すれば、支払われることがある」が、寡分割照射を受けるときには、「自分の保険を確認してほしい」と山内氏は述べるとともに、すべての保険会社で線量規定撤廃がなされることを希望するとした。

 最後にまとめとして、「癌の治療において、放射線療法はさまざまな場面で強力な武器の一つである。技術の進歩で安心で安全な治療になってきており、放射線療法も個別化の時代に入ってきた。自分らしくがんと闘う、つきあうことをサポートする治療である」と話した。また患者さん向けに、「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」2016年版があるが、放射線療法については「患者さんと家族のための放射線療法Q&A」2015年版もあるので、正しい情報を得るために活用してほしいとした。

この記事を友達に伝える印刷用ページ