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レポート

2018/05/22

第70回日本産科婦人科学会学術講演会

婦人科がんで取り組むプレシジョン・メディシン

患者ごとに異なる指標を遺伝子検査などで見つけ出す

森下紀代美=医学ライター

免疫チェックポイント阻害薬の検討も

 免疫チェックポイント阻害薬については、婦人科がんでも抗PD-1抗体ペムブロリズマブの有効性が報告されている(Le et al. NEJM 2015)。

 ペムブロリズマブは、米国において「マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)」、または「ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)」の固形がんを対象に承認されている。マイクロサテライト不安定性は、マイクロサテライト反復配列が腫瘍組織において正常組織と異なる反復回数を示す現象で、ミスマッチ修復機構の異常を示唆する所見であり、リンチ症候群に発生するがんで多く認められる。リンチ症候群では、大腸がんや子宮体がんなどが起こりやすいとされており、婦人科がんを契機に見つかることもあるため、産婦人科医が注意しなくてはならない遺伝性疾患と言える。

 dMMRの腫瘍に対するペムブロマブの有効性が報告されており、子宮体がんや、頻度は多くないもののdMMRを示す卵巣がんにおいて臨床応用が期待される。

子宮内膜症に関連するがんの治療ターゲットは?

 最後に榎本氏は、子宮内膜症関連卵巣がんにおけるがんの遺伝子異常や、その発生起源である子宮内膜症・正常子宮内膜のゲノム異常について解説し、治療標的を同定する難しさにも触れた。

 子宮内膜症から発生する類内膜がん、明細胞がんでは、ARID1AやPIK3CAの遺伝子変異が多いことが知られている。榎本氏らが新潟大学で行った卵巣がんゲノム解析でも、内膜症関連卵巣がんにおいてこれらの遺伝子変異の頻度が最も高いことが確認された。

 そこで、内膜症関連卵巣がんに対する新しい治療戦略として、これらの遺伝子変異が治療標的となるかどうか検討されている。ARID1A遺伝子変異については、明細胞がんの細胞株を使い、変異の有無で薬物スクリーニングをしたところ、チロシンキナーゼ阻害薬のダサチニブが有効な薬として候補に挙がった(Miller et al. Mol Cancer Ther 2016)。ダサチニブは慢性骨髄性白血病などの治療に使われている。現在、第II相試験において、再発治療抵抗性の卵巣がん・卵管がん・腹膜がん・子宮体がんの明細胞がん症例を対象に、ダサチニブの効果が評価されている。

 PIK3CA遺伝子変異については、PI3K阻害薬の臨床試験が多数行われているが、有効な薬の特定は進んでおらず、米国で承認されたのはidelalisibとcopanlisibの2剤しかない。PIK3CA遺伝子変異がある固形腫瘍の患者を対象に、PI3K阻害薬taselisibを評価した第I相試験でも、卵巣がん患者14人で奏効が得られた患者はいなかった。

 榎本氏らは、がんが発生する前の子宮内膜症・正常子宮内膜に注目し、ゲノム解析を行っている。がん遺伝子として有名なPIK3CAなどの遺伝子において、良性腫瘍である子宮内膜症や正常子宮内膜上皮ですでに体細胞変異が存在することを明らかにしている。さらに、がん関連遺伝子の体細胞変異は子宮内膜の腺管単位でそれぞれ認めることから、現在榎本氏らは、正常子宮内膜から子宮内膜症、そして内膜症関連卵巣がんへの進展におけるがん遺伝子変異の意義について検討を進めている。

 榎本氏は「子宮内膜症に関連するがんでは、PIK3CAが子宮内膜のがん化に直接寄与している可能性が低いため、PIK3CAを標的とした分子標的薬の効果が十分ではない可能性がある」と話した。

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