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レポート

2018/05/09

第118回日本外科学会定期学術集会

粒子線治療の保険収載拡大に向けて取り組み進む

希少がんへの適用にも期待

中西美荷=医学ライター

見送られた肝がんへの保険収載
 一方、同じく保険収載の要望を出していた肝がんについては、今回の改定で承認が見送られた。肝がんの標準療法は手術、ラジオ波焼灼、血管内治療の3つだが、粒子線治療では、すでにランダム化試験1つを含む10の前向き研究が行われており、これに3つの後ろ向き研究を加えたシステマティックレビューにより、手術したかのように腫瘍が消失(約90%の制御)し、その後、正常肝が腫大して肝機能が回復するという利点があることが示唆されている。これに基づき、日本肝臓学会の肝癌診療ガイドライン2017年版では、「他の局所療法の適応困難な肝細胞癌に対して、粒子線を行ってよい」と記載された。また上述したように、肝がんはASTROでも「医学的に陽子線治療の適用が必須な疾患」とされているが、櫻井氏によれば、その根拠となったデータのほとんどが日本の研究によるものだという。

 筑波大学での治療歴のない肝がんにおける陽子線治療の成績は、5年生存率は46%、手術可能例では55%であり、日本肝がん研究会の追跡調査による手術の57%、ラジオ波焼灼術(RFA)の47%と比較しても、遜色のないものである。さらに、単発がんでは直径6.5cm以下、多発がんでは直径4.5cm以下3個までで、血管内、リンパ管内への浸潤なし、リンパ節と他臓器への転移なしの69例を対象とする米国ロマリンダ大学で行われたランダム化試験の中間解析で、陽子線治療の2年生存率は59%で血管内治療と同じだったが、2年非再発生存率は88%対45%、治療後30日以内入院の入院日数は24日対166日で、陽子線治療の方が良好であることが示されている。同試験の最終成績や、数年後に結果が得られる予定の先進医療B(臨床試験)の成績により、肝がんでも粒子線治療が保険診療となることが期待される。

今後期待される化学陽子線治療と強度変調粒子線治療
 新たなトピックスとしては、抗がん剤と陽子線療法を併用する化学陽子線治療があり、食道がん、局所進行肺がん、切除不能局所進行膵がん、膀胱がんなどで研究が進められている。

 食道がんでは、化学放射線療法でX線を用いた場合、治療後の心肺毒性が問題で、JCOG9906試験ではグレード3以上の心囊液貯留が16%、胸水が9%、治療関連死も5.3%に認められている。しかし筑波大学で化学陽子線治療を受けた67例では、グレード3以上の副作用は心血管系1%、肺では0%と非常に低頻度であり、櫻井氏は、特に合併症を有する患者では化学陽子線治療が有望ではないかとの見解を示した。

 膵がんは非常に難治な疾患だが、兵庫県粒子線治療センターで照射線量を増加する試験が行われ、安全に線量を膵がんに集中させることができれば、成績向上を図れる可能性が示唆されている。また筑波大学でも、陽子線を用いた化学放射線療法により、25.6カ月という生存期間中央値が得られている。保険適応につなげるべく、現在、前向き試験の実施が計画されているという。

 最後に櫻井氏は新たな技術として、粒子のエネルギーと軌道を細かく制御して病巣を少しずつ順番に塗りつぶす要領で照射する強度変調粒子線治療(IMPT)が開発されていることを紹介し、さらに強力で安全な粒子線治療が可能となることに期待を寄せた。また今後、特に小児がん等の希少疾患のセンター化や、学会、施設間の連携が必要であること、引き続きエビデンスの集積が重要であることを指摘するとともに、技術革新により装置が小型化、低価格化されれば、一般的ながんへの粒子線治療の保険適応も含め、本当の意味で、この技術が広く普及していくのではないかと述べ、講演を終えた。

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