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レポート

2018/05/09

第118回日本外科学会定期学術集会

粒子線治療の保険収載拡大に向けて取り組み進む

希少がんへの適用にも期待

中西美荷=医学ライター

小児343例対象の全国多施設研究で示された効果と安全性
 最初に保険収載された小児腫瘍には、ALARA(As low as reasonably possible)「すべての被曝は合理的に達成可能な限り低く抑えるべきである」という法則がある。放射線の影響を受けやすく、成長障害(骨成長、知能発達、内分泌臓器)が懸念される小児には無駄な線量をできるだけ減らす必要性があるが、放射線治療による慢性合併症はまだ少なくなく、合併症の治療(投薬、介護、形成手術等)にも高額な医療費がかかる。また二次がんの発症も国際的には問題視されている。

 正常組織への照射が少ない陽子線治療は、小児に最適な放射線治療法として欧米諸国での保険収載が進んだという経緯がある。日本では、1983年1月から2014年8月までに4施設で陽子線治療を受けた小児343例(脳腫瘍79例、横紋筋肉腫[RMS]71例、神経芽細胞腫[NB]45例など、平均年齢7歳)を後ろ向きに解析した全国多施設共同研究で、効果と安全性が示されている。櫻井氏によれば、この調査でX線では正常臓器の耐用線量を超えるため根治線量の投与ができないと考えられた99例で、44%という10年生存率が得られたことも(全例で58.7%)、保険収載に際して治療の有用性の根拠のひとつとなった。JASTROと小児血液学会は、思春期、若年成人世代(AYA)における保険適用も視野に、現在、小児・AYA世代の腫瘍に対する陽子線治療のガイドラインを作成中である。

 同時に保険収載された骨軟部腫瘍では、特に体幹部の腫瘍など手術困難で治癒不可能だった症例で、手術可能例と同程度の有効性が示され、保険収載につながった。骨肉腫、軟骨肉腫の手術例の5年生存率はそれぞれ34%、66%という報告があるが、手術不能例に対する重粒子線治療により、それぞれ39%、43%という5年生存率が得られている。

2018年4月から3つの疾患でも保険適用に
 そして2018年1月、さらに3つの疾患について、4月からの公的医療保険の適用が承認された。

 1つは切除不能骨軟部腫瘍に対する陽子線治療。兵庫県粒子線医療センターは、現在日本で唯一、陽子線治療と重粒子線治療の両方を行うことのできる施設だが、同施設の調査で、骨軟部腫瘍の全生存率が陽子線で73%、重粒子線で70%と、陽子線治療が重粒子線治療に劣らぬ成績を納めていることが明らかになった。JASTROによる骨軟部腫瘍に関する陽子線治療のシステマティックレビューでも、陽子線が推奨される治療であることが確認され、保険収載を要望していた。

 もう1つは、口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く頭頸部腫瘍、つまり悪性黒色腫、腺様のう胞がん、嗅神経芽細胞腫などの希少疾患である。これらはいずれも放射線抵抗性で、X線治療では十分な効果が得られないことが知られていた。全国調査を行ったところ、3年生存率は悪性黒色腫ではX線で33%、陽子線では52%、重粒子線で58%、腺様のう胞がんではそれぞれ57%、73%、74%と、いずれも粒子線治療で良好だった。また副作用についても、グレード4以上は悪性黒色腫ではX線の6.5%に対して陽子線4.4%、重粒子線2.6%、腺様のう胞がんではそれぞれ14.3%、5.6%、4.8%と、粒子線治療で軽減されていた。この成績に加えて、2014年に論文報告されていた生存率、再発率、局所制御率における粒子線の有用性を示したシステマティックレビューの解説を添えて、保険収載を要望していた。

 3つ目として、限局性前立腺がんも保険適用となった。X線治療では現在、正常組織の照射線量を低減し、照射を腫瘍に集中させる強度変調放射線治療(IMRT)という高精度の照射法が開発されているが、同じ腫瘍に対して粒子線治療を行うことを想定すると、病変への照射量は同等だが、周辺組織に対する照射量は粒子線の方が少ないことが示唆されている。また日本放射線腫瘍学研究機構(JROSG)が行った、2008年1月~2011年12月に7施設で治療した前立腺がん1291例に対する陽子線治療の多施設・遡及的解析によれば、観察期間中央値69カ月において、リスク別(低リスク/中間リスク/高リスク)の5年生物学的非再発生存率(bRFS)は、97.0/91.0/83.2%だった。櫻井氏によれば、中間リスクの前立腺がんで90%を超える成績は、非常に良好だという。

 そこで日本泌尿器科学会の協力のもと、粒子線治療がIMRTに比べて優れているかどうかを検討すべくシステマティックレビューを実施したところ、これまでに行われた限局性および局所進行前立腺がんに対する粒子線治療の効果および副作用は、同じ病態に対するIMRTと同等以上の成績であることが示された。現在さらに、先進医療B(臨床試験)により、優位性の検証を行なっている。実施時期の違いによる成績の優劣は考慮せねばならないが、現在までの中間解析では、中間リスクの前立腺がんではIMRTと比較して、有効性、副作用いずれについても粒子線治療の方がやや良好だという。

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