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レポート

2018/04/02

イギリスの驚きの「国民による病院格付け評価」

病院選びは治療成績だけが重要ではない

福原麻希=医療ジャーナリスト(西田匡吾=翻訳協力)

専門家による病院評価では治療実績と病院運営が重視される
 さらに、イギリスでは国や専門機関も病院を監査・評価し、その結果やレポートを公表している。治療実績は病院名入りで見られる。

 NHSから独立した公的機関Care Quality Commission(CQC)が実施するIntelligent Monitoringでは、全ての病院や診療所の監査結果を4段階で格付けし、医療者や行政向けに公開している。評価項目は5つの領域(安全確保、適切なサービス、思いやり、対応力、運営力)に分かれ、それぞれに4~8の質問が設定されている。

 例えば、「思いやり」の場合、(1)尊厳・敬意ある対応(2)治療決定時の患者の参加と話し合いの時間(3)患者が理解できるような説明(4)先を見越した計画(5)患者のプライバシーの確保(6)患者や関係者の気持ちに寄り添う体制(7)患者の個人としての自立を支援──などの評価項目が並ぶ。

 それらの質問の総合評価として、5つの領域ごとに、”Outstanding(優れている)””Good(良い)””Requires improvement(改善を要求する)”と誰でもわかりやすいように表示されている。

 「Intelligent Monitoringはどんなに古いデータでも1年前の内容です。このほかに、半官半民の機関がレセプトデータに基づいて継続的に死亡率を監視し、CQCと病院に警告する仕組みもあります。このような監視・警告・公表の仕組みがあれば、術後の死亡事故が多くなっているなどの異常も早く気付くことができるでしょう」と森島さんは言う。

 CQCのような仕組みは、日本でも日本医療機能評価機構が「病院機能評価」として実施している。病院機能評価は、「病院の設備や機能(ストラクチャ評価)」および、「病院がどのように運営されているか(プロセス評価)」に重点が置かれる。プロセス評価とは、たとえば、病院組織の基本的な姿勢については、「受付やスタッフの対応」「患者中心の医療が実践されているか」「患者の安全確保」「医療関連の感染制御に対する内部規定の内容」等がチェックされている。だが、全国すべてではなく、受審を希望した病院が対象となり、その結果は病院によってはホームページで公表されているにとどまる。

 森島さんは日本とイギリスの病院評価の違いについて、「イギリスが積極的に治療成績を開示しているのは、『病院はいつも社会や市民から見られている』という状況をつくろうとしているからです。この結果、病院は自主的に病院の医療の質を向上させる活動を活発にしています」と話す。

医療の質向上に、がん登録のビッグデータが活かせるか?
 これまで紹介してきたような「イギリスの患者による病院評価の取り組み」から、日本の患者に伝えたいことは「病院を選び、利用後に評価するときの視点」だ。医療を受けるときにどんな情報があると、私たちにとって役立つか。イギリスの事例からは、治療成績だけが病院選びの重要なポイントではないことがわかる。

 2016年から全国の病院でがんと診断された人の診断・治療・その経過の情報をデータベース化する「全国がん登録」が始まった。今後、がん診療に特化したビックデータが蓄積されていく。私たち市民や患者も、このデータづくりに積極的に意見や要望を出すことはできる。他国の事例は、そんなとき、いろいろな視点で考えていくヒントになるだろう。

「がん患者学会 2017」とは

全国がん患者団体連合会(全がん連)の活動のひとつで、全国のがん患者団体で活動する人が集まり、がん診療や患者・家族の支援に関わるトピックスを学ぶとともに、課題を抽出し対策を議論している。参加者は活動の取組みや国や地域のがん対策に活かしている。昨年12月は3回目で、2日間のプログラムに20都道府県39団体58人が参加した。今年はそれぞれの団体の活動を報告するポスター発表もあった。

第1日目は「ゲノム医療」と「がん登録」が取り上げられた。この2つのトピックスを取り上げた理由について、全がん連の天野慎介理事長はこう説明する。「がん登録が法律で施行されるようになったため、患者会としてがん登録に関して正しい知識を学んでおくとともに、がん登録で得られたたデータががん医療の向上に活かされるため、我々にはどんなことができるか考えていくためです」

ゲノム医療については「難治がんや希少がんなどでのがん医療の向上が期待されるが、研究段階であり、患者が治療薬にたどり着ける割合はまだ少ない。過剰な期待を持つことなく、患者団体も正しく理解する必要があります」と言う。

参加者からの感想は次の通りだった。
「プログラムの内容が国の施策に基づき、議論もレベルが高い内容でした」(神奈川県相模原協同病院 がん患者会・富貴草 村上利枝さん)

「日頃、学べないテーマの講義を受けられただけでなく、他県の取組みを詳しく知ることができました。何より日々、前向きに学ばれている多くの方々と交流できたことがよかったです」(福岡県・NPO法人キャンサーサポート中原 美夏さん)

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