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レポート

2018/01/17

治療の選び方(泌尿器がん) Vol.2

高齢者ががんになったとき

福原 麻希=医療ジャーナリスト

選択肢が豊富になった膀胱がんの治療
 膀胱がんの患者数は、がん患者全体から見た場合3.5%と少数だが(※1)、70歳以上の罹患者が多いという。膀胱がんの特徴は症状がわかりやすいことで、▽肉眼で見てもわかる血尿▽排尿時や下腹部の痛み▽頻尿や尿意切迫感(尿意を感じたとき我慢できず、すぐ排尿してしまうこと)▽尿閉(尿が出ない、出にくいこと)▽背中の痛み、などが現れる。

 特に、早期でも進行していても血尿を放置した場合、血液の塊が膀胱内に充満し、尿を出せなくなる。尿を出すときの痛み・頻尿・発熱なども伴うため、大変つらい。さらに、血液の塊を取り出すために何度もカテーテルを入れることになり、体への負担が大きい。このため、前立腺がんの「監視療法」や「待機療法」による経過観察とは異なり、膀胱がんでは高齢者でも積極的に手術や抗がん剤治療、放射線治療が勧められる。

 早期の膀胱がんであれば内視鏡的な切除が可能だが、進行がんでは膀胱をすべて摘出する。膀胱を全摘する手術は出血量が多く輸血することもあり、体の負担が大きい。進行度によっては、術前・術後、抗がん剤治療が必要になることもあるため、高齢者では心身の状態を評価することが必要になる(前回の連載記事参照)。さらに、膀胱がん患者には喫煙者が多く、その場合は心臓や肺の機能が低下しているため、手術ができるかどうかはより慎重に判断する(図3)。

図3 膀胱がんの病期と治療選択(国立がん研究センターがん情報サービスから転載)

 膀胱を全摘した場合は、術後、新しい排尿経路となる「ストーマ(人工肛門)」を装着する。ストーマは自身でのケアが必要になり、高齢者だけでは難しいこともある。「治療選択には、家族や訪問看護など、周囲の支援が得られるかなどを加味して考える必要があります。また、装着時には問題がなくても、数年先のことまで視野に入れて、患者さんが困らないような対応をあらかじめ考えなければなりません」と三塚氏は説明する。

 一方、膀胱摘出手術やストーマの装着を避けたい人、あるいは、心身の状態によって手術や抗がん剤治療ができない人は放射線治療を選ぶ。放射線治療が有効な場合もあるが、膀胱を残すことになるため、術後、やはり血尿などの症状でつらいことが多いそうだ。「先に放射線治療で様子を見ることも考えられますが、その場合は放射線の照射により組織が変性して周囲の組織と癒着するため手術が難しくなります。がんが進行して手術ができないこともあります」と三塚氏は言う。

 このほか、膀胱がんの治療のセカンドオピニオンで多いものは、「転移した場合の抗がん剤治療」についてだという。標準治療では2種類の抗がん剤を組み合わせる(ゲムシタビン+シスプラチン)が、シスプラチンは心臓や腎臓の機能が低下している場合、吐き気やだるさなどの副作用が出やすく、高齢者にはあまり向いていない。その場合はシスプラチンを減量することもあるが、効果が得られにくくなる。

 三塚氏は「抗がん剤治療で効果が得られることもあるが、それが一時的な場合もあります。また、心身の状態が悪い患者さんの場合は長期入院になるため、家族と一緒に過ごす時間が短くなったり、副作用でつらい思いをしたりすることも。高齢の患者さんの場合には本人の希望を尊重して、治療を継続しないという選択肢もあり得ます」と言う。非常に難しい治療選択になるが、「高齢者の治療を考える上では大事なところです」と三塚氏は付け加える。

 これまで、膀胱がんの標準的な抗がん剤治療は前述のゲムシタビン+シスプラチンの組み合わせのみだったが、2017年12月には免疫チェックポイント阻害剤のペンブロリズマブが膀胱がんでも承認された。治療の選択肢が増えたと期待されている。


※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
※2 Kimura T. J Urol 2016; 195.
※3 Bechis et al. JCO 2011; 29: 235.
※4 Uemura H, Matsubara N, et al. BMC Urol 2016.

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