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レポート

2017/11/07

国立がん研究センター・希少がんセミナーより

個別化医療に期待のかかる原発不明がん

福島安紀=医療ライター

プラチナ系かタキサン系抗がん剤治療が奏効することも
 原発不明がんには、病気の進行度を表す病期(ステージ)分類は存在しない。治療は薬物療法が主体になる。治療法は、「原発不明がん診療ガイドライン2010年版」(日本臨床腫瘍学会編)、「NCCNガイドライン原発不明がん」によって標準化されている。

 特定の治療を有するサブグループに分類されるのは、どこからがんが転移したのか推定できる場合だ。例えば、組織診断が腺がんで、わきの下のリンパ節に転移があるだけの女性患者なら、腋窩リンパ節転移陽性の乳がんに対する治療が行われる。漿液性腺がんでがん性腹膜炎のみの女性患者ならステージⅢ期の卵巣がん、腺がんで多発性の造骨性骨転移があり腫瘍マーカーでPSAが上昇している男性患者なら転移性前立腺がんに対する治療が第一選択となる。

 また、低・未分化がんで縦隔・後腹膜リンパ節転移など体の正中線上に病変が分布している50歳未満の男性なら性腺外原発の胚細胞腫瘍に対する治療、扁平上皮がんで上・中咽頭リンパ節転移のみなら頭頸部がんに対する治療が行われる。

 一方、特定の治療を有するサブグループに入らないがんに対する治療は難しい。「積極的な抗がん剤治療と支持・緩和医療のどちらがよいのか、比較した試験はありません。原発不明がんの患者さんたちの治療経過を後から調べた研究では、化学療法を行った群で生存期間が長いとの報告がありますが、もともと全身状態がよかった患者さんに積極的な治療が行われた可能性があると指摘されています。国内外の研究では、治療を受けた人の約3分の1では、がんが縮小すると言われています。中でも、シスプラチン、カルボプラチンなどプラチナ系抗がん剤、または、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキサン系抗がん剤でより生存がよい傾向があります」と野口氏は解説した。

 特定の治療がない原発不明がんに関しては、さらなる治療成績の向上が求められる。最近注目を集めているのが「プレシジョン・メディシン」と呼ばれる個別化治療だ。野口氏によれば、原発不明がんの治療法開発としては、(1)遺伝子発現プロファイル/エピジェネティクス解析に基づく原発巣の推定、(2)網羅的遺伝子異常解析による治療標的となるアクショナブルな遺伝子異常の検索――の2つの方向で研究が進んでいる。(1)は、どのような遺伝子を持っているかを調べて推定される原発臓器の治療を行うこと、(2)は、がんそのものの原因となっている遺伝子異常を調べてその遺伝子の働きを抑える分子標的薬があれば、その薬を用いた治療を行う方法だ。
 
 「これらの新しい方法もまだ課題が多いのが現状です。遺伝子発現プロファイル等に基づく治療選択の有用性を評価するためには、生存率を本当に向上できるかについて検証する必要があります。また、費用対効果の検討も重要です」と野口氏は指摘する。

 講演では、期待の高い網羅的遺伝子異常解析に関して厳しい現状も伝えられた。米国のオルバニー大学病院で200人の原発不明がん患者を対象にした研究では、治療標的となるアクショナブルな遺伝子異常が見つかった人は2人のみだったという。また、米国のMDアンダーソンがんセンターで網羅的遺伝子異常解析を受けた原発不明がんの患者17人中7人が、治療標的となるアクショナブルな遺伝子異常にマッチした分子標的薬の第I相試験に参加したが、奏効した患者はいなかった。

 「網羅的遺伝子異常解析に基づく治療選択の有用性を評価するためには、やはり、検証ステップを踏む必要があり、まずは、原発不明がんにおける治療標的となるアクショナブルな遺伝子異常の頻度、種類について確認することが大切です。遺伝子異常にマッチする薬がなければ効果も得られないので、そういった薬の開発が急務です」と野口氏。

 そうした課題の解決のため、東京医科歯科大学が新規治療発見を目指したがんプレシジョン・メディシン遺伝子情報登録研究、国立がん研究センター中央病院が希少がんと原発不明がんを対象にした遺伝子プロファイリングと標的治療に関する前向きレジストリ臨床研究「マスターキー(MASTER KEY)プロジェクト」を進めている。同プロジェクトでは将来的に、特定の遺伝子異常などがある人に、医師主導治験を行う方向という。

原発巣が分からなくて不安な人は、希少がんホットラインへ電話を
 Q&Aセッションでは、「原発不明がんの疑いと診断された場合は原発巣をどこまで調べるべきでしょうか、早期に治療を開始すべきでしょうか」との質問が寄せられた。野口氏は、「組織診断をし、一通り画像検査をして病変の分布の状態を調べたら、原発巣が分からなかったとしても原発不明がんとして治療を始めたほうがいいと言われています。治療中に原発巣が見つかる方が3分の1くらいいます」と回答した。最初に行った薬物療法が効きにくくなり、病気の勢いがまた増して来た時には、「別の抗がん剤で治療をする」(野口氏)。
 
 また、「原発不明がんだが、EGFR変異が見つかり肺腺がんに準じてEGFR阻害薬を使用している。再発した場合、別のEGFR阻害薬が使えるのか」という患者の家族からの質問に、野口氏は次のようにコメントした。「肺腺がんの推定でEGFR阻害薬が効いているのは非常に喜ばしいことですし、もしも病気が進行した時には、肺腺がんの治療に準じた治療が行われると考えられます。ただ、保険診療に関しては、原発不明がんを適応症とした薬はないのが現状です。遺伝子の変化に合わせた治療を保険診療の中でどうしていくかは大きな課題です」。

 プレシジョン・メディシンで特定の遺伝子変異が見つかった場合、どういう治療を行うか、その治療が保険診療で行えるのかは患者にとって大きな問題だ。野口氏は、「分子学的な病気の再編成というか、遺伝子変異別に薬が使えるようになってくると原発不明がんの薬の開発も進むのではないでしょうか」と話した。

 同センターの希少がんホットラインには、毎日1~2人は原発不明がんに関する相談があるそうだ。ホットラインを担当する看護師の加藤陽子氏は、「原発巣がなかなか分からなくて不安だったら、希少がんホットライン、あるいは、各地域のがん診療連携拠点病院の相談支援センターに相談してみてください。何か糸口が見つかるかもしれません。住んでいる場所によって国立がん研究センター中央病院に来られない患者さんには、医師のネットワークを使って、原発不明がんを専門にしている病院を紹介することもできます」と強調し、セミナーを締めくくった。

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