横浜市立大学附属病院化学療法センター長の宮城悦子氏
子宮頸がん死を減らすためにもがん検診の受診を
「科学的根拠のある予防法、検診法を進めてがんの罹患率も死亡率も減っているのが本当の先進国。しかし、日本では残念ながら、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの罹患率、死亡率ともに増えているのが現状です。特に子宮頸がんは、うまく対策を立てれば限りなく患者数をゼロに近づけることができる病気ですが、日本では患者数が増え続けています。大事なお嬢さんを子宮頸がんで亡くす親御さん、ご家族をこれ以上増やしたくない」
そう話すのは、「増え続ける婦人科がん対策の課題」と題して講演した横浜市立大学附属病院准教授で化学療法センター長(婦人科医)の宮城悦子氏だ。
子宮頸がんは主に性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によって子宮の入り口(頸部)に発生するがん。「男女を問わず8~9割の人が一生に一度はHPVに感染します。普通はHPVに感染しても自然に消滅しますが、5~10%の方はウイルスが排除されないで一生ウイルスと暮らすようになります。女性の場合、5~10%のうちのさらに数パーセントの人が子宮頸がんになると考えられています。男性の場合、頻度は少ないですが、陰茎がん、肛門がん、咽頭・喉頭がんにつながることがあります」(宮城氏)
子宮頸がんにおいて、ステージ0期、IA期といった早期がんではまったく症状はない。子宮頸部の細胞を採取して異常細胞の有無を調べるがん検診が有効だ。子宮頸部の細胞を自己採取する子宮頸がん検診を行っているところもあるが、奥の方の細胞までは自己採取が難しいため、婦人科医による細胞診が推奨される。
一方、子宮体がんはまったく別の機序で発生するがん種で、主に子宮の内側にある子宮内膜の異常増殖によって発症する。月経不順、更年期以降の女性、妊娠・分娩回数の少ない女性、動物性たんぱく質の摂取量の多い人は子宮体がんになるリスクが高い。早期でも不正出血があり、その自覚症状が早期発見につながることが多い。
「不正出血があるのに単なる閉経前後の月経不順と思い込み、かなり進行するまで病院に来ない方がいます。おかしいと思ったらすぐに受診してください」と宮城氏はアドバイスする。
もう一つの婦人科がんである卵巣がんは、排卵による損傷と修復に伴い卵巣表面の細胞に傷がつき、異常増殖が起きると考えられている。卵巣がんは早期発見が難しく、発見されたときにはその半分以上が進行がんであり、進行が早いのが特徴だ。
血液検査で婦人科がんのリスク判定ができると注目されるAICS
婦人科がんの早期発見が重要なのは、がんが命を脅かすばかりではなく、子供が産めなくなったり、卵巣摘出によって更年期障害のような症状が出たりすることがあり、患者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えるからだ(図2)。