elpamotideを投与すると10%の患者に投与部位に潰瘍が出現
この結果から、elpamotideは有効性を示すことができなかった、という結論になる。
ただし、詳細に検討したところ、実薬群つまりelpamotideを投与した群において、注射部位に潰瘍が認められた症例が10例あった。この潰瘍はプラセボ群には認められなかった。
薬剤を注射した部位には、ときに発赤などの反応が認められることがあるが、今回の臨床試験では、こうした多くの注射部位反応は実薬群にもプラセボ群にも同様に認められている。しかし、潰瘍だけはプラセボ群には認められず、elpamotideを注射した患者のうち、10例に特有の反応だった。そのため、この潰瘍はelpamotideを投与したことに起因する特有の反応と考えられた。
そこでこの潰瘍の形成の有無別にOSを再検討した結果、実薬群のうち潰瘍が認められなかった90例のOS中央値が8.15カ月だったのに対し、潰瘍が認められた10例のOS中央値は16.0カ月と延長していた(図1)。この潰瘍が、単に長期にelpamotideを投与した結果として認められた可能性があるため、3カ月時点における解析も行ったが、同じく潰瘍と生存の間に相関関係が認められた。
図1 PEGASUS-PC試験における、潰瘍が認められた実薬群、潰瘍が認められなかった実薬群、プラセボ群の生存率の推移
この結果を単純に考えれば、膵癌患者のうち、elpamotideを投与することで注射部位に潰瘍ができた場合、生存期間が延長するかもしれないと期待させる。では本当にそう考えても良いのだろうか。