患者・市民パネルの声から生まれた情報も
同センターがん情報提供研究部医療情報サービス研究室研究員の八巻知香子氏
「家族や周囲の人が必要な情報をまとめたものが欲しい」―-。『身近な人ががんになったら』は、患者・市民パネルの検討会で出た意見を元に生まれた小冊子だ。がんの患者や家族としてどういう情報が欲しいか意見を出し、それが形になっていくのも患者・市民パネルのやりがいの1つだ。
鳥取県のKさん(53)も、2009年から4年間活動した1人。「応募したときには、スキルス胃がんと診断され、手術ができないと告げられてから半年しか経っていなかったので、正直、2年間という任期は長いな、続けられるかなと思いました。でも、パネルになったことで全国に仲間が広がりましたし、病状が厳しい中でも頑張っている方たちと出会って勇気が出てきました。4年間の活動はやりがいがありましたし、パソコンを使う機会が増えたお陰で、インターネットを使って正しい情報を集める力がつきました」と話す。
『患者必携 がんになったら手にとるガイド』の試作版を読んでアンケートに答えたり、『身近な人ががんになったとき』の作成時に体験エピソードを書いて送ったりと、がんになった体験を生かす場があることは闘病生活の励みになったそうだ。
また、11年末に完成した『もしもがんが再発したら〔患者必携〕本人と家族に伝えたいこと』は、再発や多重がんを経験した患者・市民パネル8人とがんの専門家がワーキンググループを結成し、7回の検討会を重ねて作り上げた。この本(PDF版もある)は、再発を告げられてつらい気持ちでいる患者や家族に寄り添えるように、「がんの再発、私たちの体験」という項目から始まっている。
「何を書いていくかという段階から、体験者の方々と一緒に議論を重ねながら進めました。がんが再発したとき、どう生きていくかは答えのないテーマですが、実際に再発に直面した方々にしか分からないことがあります。『もしもがんが再発したら』の作成に限らず、患者・市民パネルの活動自体、情報の受け手となる当事者の視点を入れるために重要なものだと思っています」。同センターがん情報提供研究部医療情報サービス研究室研究員の八巻知香子さんはそう強調する。