問い合わせ内容として多かったのは、治療や検査の中断についてだった。特に、石巻地区の通院者から寄せられた問い合わせは全件が治療・検査の中断、治療の未開始に関するものだった(図1)。その対応として、治療中断例の半数以上、検査中断の全てを東北大学病院外来・入院にて受け入れた(図2)。
図1●震災後、東北大学病院のがん診療相談室に寄せられた通院先別の問い合わせ件数(「震災とがん」における森氏の発表スライドより)
図2●震災後、東北大学病院のがん診療相談室に寄せられた内容別の問い合わせ件数(「震災とがん」における森氏の発表スライドより)
森氏はこの対応について、「院長以下スタッフ全員が被災地からの患者受け入れの意識を共有したことが、震災時のがん診療難民発生の回避に寄与したと思われる」と振り返った。
当初は治療・検査・外来の中断への問い合わせが圧倒的に多かったが、17日目あたりからは経済的な問題や、交通手段の麻痺など通院困難についての問い合わせなどが見られるようになった。
森氏は、このようにがん診療相談室に寄せられた問い合わせから、「がん診療相談のノウハウを持ち、他の拠点病院や院内の関連各科との連携機能も持つがん診療相談室が果たした役割は大きかったと思われる。がん診療相談室を中心として、他の地域の拠点病院間のネットワークを構築することで、大災害時にもがん患者の治療継続が可能となる」とまとめた。