がんになったとき、自分の子どもに病気や治療のことを話したほうがいいのか。「まだ、子どもが小さいから、よくわからないのでは」「かえって、不安にさせるのではないか」いう疑問に、ぶつかることだろう。でも子どもは父親、母親のいつもと違う様子に気付いている。「どんなときに切り出せばいいか」「どんなふうに話せばいいか」などの助言を含めて、国立病院機構四国がんセンターの取り組みを紹介する。
がんと診断され治療が始まると、「子どもには心配をかけたくない」と黙っている家族は少なくない。だが、そのために治療選択で迷う人もいるという。
一方、子どもは家庭の異変を感じていても、なかなか、大人に聞くことはできない。「どうしたんだろう」と想像を膨らませて、不安や怖い思いを倍増させてしまいがちだ。また、病気について知らされていないと、「自分が悪いことをしたから、お父さんやお母さんが病気になった」と思い込んでしまうこともしばしばある。家族の中で自分だけが知らないと気付いたとき、ショックを受けてしまう。
父親や母親から笑顔が消えてしまうなど、子どもにとって親の変化がストレスとなり、喜ばせたいと勉強やお手伝いを頑張るようになるなど、急に“よい子”になることもある。反対に、例えば、身体に頭痛や腹痛などの症状が出たり、兄弟ゲンカが多くなったり、反抗的になったり、引きこもりになったりするなど行動が変化する(下表参照)。
・微熱 | ・皮膚症状(アトピー性皮膚炎、かゆみなど)の悪化、長期化 |
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・咳が止まらない | ・成績が上がる・下がる |
・学校に行きたくない | ・頭痛 |
・友達や兄弟ゲンカが多くなる | ・まとわりついてくる |
・腹痛 | ・落ち着きがなくなる |
・ボーッとする |
四国がんセンターの臨床心理士・井上実穂さんは言う。「ご家族のタイミングのいい時に情報を伝えると、子どもたちは安心できます。家族で同じ状況を分かち合えるので、子どもも自分にできることを考えるようになり、自然と助け合っていくようになります」
そこで四国がんセンターでは、昨年から子どもがいる家族をサポートするため、チャイルドケアプロジェクトを立ち上げている。さらに今年度からは患者・家族総合支援センターを中心として、愛媛県がん患者・家族支援事業として県内に広く普及啓発活動を展開する予定としている。対象となる子供たちは18歳まで。特に、幼稚園の年長から、小学生、中学生に重点を置く。
プロジェクトは、有志の集まりではなく、四国がんセンターの正式な組織として発足した。臨床心理士、がん看護専門看護師、医師、遺伝カウンセラーが中心になり活動している。患者のカルテやメディカルスタッフ同士の情報交換で子どもがいると分かった場合、チャイルドケアプロジェクトのパンフレットを看護師から渡してもらい、患者、家族の求めに応じて臨床心理士が個別に対応している。
四国がんセンター患者・家族総合支援センターのチャイルドケアプロジェクトメンバー。患者・家族総合支援センター室長の菊内由貴氏(前列左)、臨床心理士の井上実穂氏(前列中)、乳腺科医師の清藤佐知子氏(前列右)