外来放射線治療の診察は週1回で可に
近年、厚労省が推し進めてきたがん治療の外来化も、今回の改定でさらに推進が図られた。
例えば、外来化学療法では、改定前、従事するスタッフの経験年数や化学療法のレジメン(治療内容)で、注射代に点数差が設けられていたところに、投与する抗がん剤の副作用の強さによる点数差も設けられた。15歳以上の患者が、スタッフやレジメンが充実している施設で化学療法を受ける場合、改定前は、注射代や薬代に5500円が加算された。それが改定により、副作用の強い抗がん剤を投与する場合は加算額が5800円にアップした一方、それ以外の抗がん剤の場合は4300円にダウンした。
外来化学療法の点数は、手間やコストのかかる診療を手厚く評価したものと言える。一方で、こうした診療の質を反映したとは言い難い点数の設定も行われている。
例えば外来放射線治療では、一度治療医の診察を受ければ2800円が医療機関の収入になり、しかも診察日を含めその後7日間は、看護師や診療放射線技師による観察・記録・報告があれば、医師の診察なしでも放射線照射ができるようになった。
放射線治療医が足りない現実を踏まえた点数設定だが、今改定では、がん医療以外でもこうした現実重視の見直しがいくつか行われている。
安全で正確な手術を評価
がん関係の手術点数も、軒並み引き上げられた。例えば、腹腔鏡を用いた胃の全摘手術は74万8300円から83万900円へ、腋窩部郭清を伴わない乳房部分切除術は21万7000円から28万2100円へ、前立腺悪性腫瘍手術は31万6000円から41万800円へ――といった具合だ。
ちなみに、前立腺悪性腫瘍手術では、手術支援ロボット、「da Vinci S」の使用が初めて認められ、手術料に54万2000円が上乗せできるようになった。画像ナビゲーションによる手術支援の対象となる手術も拡大され、安全で正確な手術への取り組みが手厚く評価されている。
そのほか、がん診療連携拠点病院が外来の化学療法や放射線治療の患者の紹介を受けた場合の点数新設や、カウンセリングやリンパ浮腫指導の診療報酬を算定できる医療機関の拡大、緩和ケア専門医と在宅医療担当医が同じ日に診療した場合の点数新設など、医療機関同士の連携に関する点数の見直しも目についた。
がん患者にとっては経済的な負担が増えることは、あまり歓迎できないかもしれないが、今後のがん医療の方向性を示しているのは間違いない。