2008年度以降、診療報酬改定の度に重要項目とされてきたがん医療。今回も点数の新設や引き上げが相次いだ。その主な内容と狙いを紹介する。
今回の改定で、最も大幅に見直されたのは、緩和ケア病棟(ホスピス)の点数だと言っていいだろう。入院期間を問わず1日当たり3万7800円だった入院料が、改定で、30日以内は同4万7910円、31日~60日は同4万2910円、61日以上は同3万2910円と、入院期間に応じて3段階の点数になったのだ。
緩和ケア病棟への入院待ちが少なくない現実を踏まえ、厚生労働省は緩和ケア病棟に対し、がん患者の在宅療養への移行とその支援の役割も持たせようとした。そのため、入院期間が長くなるほど1日当たりの収入が少なくなるような点数設定にして、自宅復帰を促したわけだ。
図1 緩和ケア病棟の入院料の見直し(1点:10円)
今回は患者の負担増に
ただし、60日以内の入院であれば、改定前より医療機関の1日当たりの収入は増加し、それに伴い患者の経済的な負担も増える。NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会に加盟する緩和ケア病棟の平均入院期間は40日であることなどから、今回の改定では、増収になる緩和ケア病棟がほとんどだと見られる。
がん患者にとっては、負担が増える頭の痛い話だ。しかし、改定を受けて、緩和ケア病棟を新しく作ったり、痛みのコントロールがついた患者を自宅に返したりする動きも出てくるだろう。緩和ケア病棟に入院しやすくなれば、がん患者にとってプラスになる。
そのほか緩和ケアでは、外来で緩和ケアチームが診療した場合の点数や、緩和ケアの経験があり研修を受けた医師が直接実施した場合の点数が新設された。小児患者に緩和ケアを実施した場合の点数の新設も含め、全体的に充実が図られている。