「日本の病院は忙しすぎです」。ある元患者さんの声です。この方は「もう少し余裕をもって診療してもらえるようになることを期待しています」と結んでいました。また「リスクの話より知りたいことが多かったのに、ままならなかった」と振り返る方もいます。「患者の気持ちになっての対応」を求める声も。こちらは患者家族の方です。今回は「元患者、患者の家族の声」をお届けします。
がんナビ読者アンケートでは、読者のニーズをより詳細に把握するために、読者の背景、閲覧頻度、各メニューの利用頻度と評価などについて明らかにしています。調査は、2012年1月17日から2月7日まで、日経BPのインターネット調査システムAIDAによって実施しました。今回の調査には131人に回答していただきました(プロフィールは末尾に掲載)。以下、アンケートの自由意見欄に寄せられた元患者および患者の家族の声から、主なものを紹介します。
イラスト:Toshio Nomura
【元患者の声】
◆日本の病院は忙しすぎです
実際の手術と治療は日本で受けましたが、経過観察は海外在住のためこちらで受けています。こちらのお医者さんも忙しいですが、患者さんもそれなりに多いものの日本のがんセンターのようなことはありません。患者の疑問にも丁寧に答えてくれます。日本の病院は忙しすぎですし、お医者さんによるかもしれませんが、入院している時でさせ話をするのが難しかったです。これからますますがんにかかる人が増えると思うのですが、もう少し余裕をもって診療してもらえるようになることを期待しています。(女性、40代)
◆患者も勉強して納得のいく道を
診断治療から今年は10年目。そのころはネット環境がやっと身近になってきたばかりで、調べ物をするにもとても苦労しました。現在は、多くの参考になるサイトがあり、患者として、家族として、医療者とコミュニケーションをするのに役立っていることと思います。患者も充分に勉強して、納得のいく道を選択して欲しいものです。(女性、50代)
◆乳がんの再建手術を保険診療に
乳がんの再建手術(自家組織の移植以外)を早く健康保険の適用にしてほしいです。四肢の欠損は保険診療になるのに、乳房が自費になる理由が分かりません。乳房再建は決して美容整形ではありません。費用が高くて再建できず、心に傷を負ったまま生きている女性がたくさんいると思います。(女性、30代)
◆家族と本人一緒に告知して
がんと診断されたら、家族と本人一緒に告知してほしい。余命については、本人には希望を持てるように話してほしい。(男性、60代)
◆患者の年齢、体力に応じた選択肢も
がん治療は患者の年齢、体力に応じて選択肢があっても良いのではと思いました。抗がん剤治療のときに、抗がん剤の量は身長と体重によって決められるそうですが、体の大きい高齢者は副作用も多くなるのでは? 私はかなり辛かったです。(女性、70代)
◆「リスクの話より知りたいこと」が多く発生
最近では「インフォームド・コンセント」や「告知」は当たり前の時代になりました。まず、「一昔の様な内緒」は特別なケースを除いてありえない時代です。しかし、私自身の体験からも「告知直後」の「インフォームド・コンセント」では「何が分かったのか? 分かってないのか? すらほとんど出来ていなかった」と思います。治療が進む内に次から次へと体にも心にも分からないことが発生しました。時に自身の病気のことだったり、今の治療のことだったり。副作用や後遺症のことなどと。まずほとんどど白紙状態の知識レベルの時の説明でどれだけの人が理解出来るのでしょうか?
一方で、「聞いてなかったとアクシデント発生時に訴えられては困る」などと用心のために考えられる限りのリスクの話はされる。でも、実際、治療が始まると「リスクの話より知りたいこと」が多く発生しました。本来は治療にも色々な段階があり、その段階ごとに時間を取って説明して欲しいけれど、「セカンド・オピニオン」と違い「2回目以降の説明は点数が付かない」とのことで、「医療者側の全くのサービス」だと聞きました。点数が付かない場合、そこから先は各医療機関や医療スタッフしだいで、外来での治療や経過観察時代に発生する色々な問題や疑問に対して聞くということも難しい。患者会があればそれでも先輩患者からアドバイスを聞くというチャンスもあるが、なかなかそれも難しい。
サロンもそうですが「先輩患者は自分の体験を後輩患者に伝えたい」という人も多いです。 「一人ひとりの体験は宝」でもあります。医療行為に関しては医療者が、心のケアは専門家と体験者で。色々な方向でのサポートがあると嬉しいと思います。(女性、40代)
◆事前にていねいな説明を
死亡率が低くなったとはいえ、手術によりいろいろな弊害があります。再発や転移といった重大なこと以外にも、リンパ節をとったことによる浮腫、感染症になりやすいこと、化学療法の後遺症でしびれが残るなどです。こうした情報については、手術間際に説明する程度です。後で患者が実体験することもあり、命がなくなるほどではなくても、QOLの観点からすれば今後の人生を生きていく上では、事前にていねいな説明が必要だと思います。がん診療に入る前のがんが疑われる段階で、「こういう要因があるから、治る可能性は高くてもできれば、早いうちに手を打てば打っただけ良い」のだということを、患者に納得させるようにしてほしいと思います。(女性、40代)