「がん登録の法制化が必要」――。国のがん対策推進協議会では、がん登録の法制化を求める声が高まっている。なぜ、法制化が必要なのだろうか。そもそも、がん登録とはどのようなものなのか。問題点と利点を探ってみた。
「日本人の3人に1人ががんになっている」「毎年65万人以上ががんに罹患している」
日本人のがんの罹患数に関してよく聞くこの数値、実は推計値だということをご存知だろうか。新たにがんと診断された人数である罹患数とがん患者の予後を調べ、生存率を算出するためのデータを集める仕組みをがん登録という。
がん登録には、表のように、地域がん登録、院内がん登録、臓器がん登録の3種類があり、それぞれ実施主体と目的が異なる。自治体が実施し、本来、全がん患者が登録されるべきなのが地域がん登録だ。また、院内がん登録は、がん診療連携拠点病院で登録が義務づけられている。
表1 がん登録の種類(「NPO法人 地域がん登録全国協議会」ホームページより)
国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部部長の祖父江友孝氏
病院のデータ公開は患者さんにもメリット
「地域がん登録は、国と地域のがん対策の企画と評価に役立つのが最大のメリットです。院内がん登録については、病院ごとのデータの公開が、患者さんの病院選びの参考になりますし、病院側が自分たちの提供している医療を見直すきっかけにもなります」と、国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部部長の祖父江友孝氏は言う。
現在、45道府県1市が地域がん登録を実施している。ところが、データの把握漏れの多い県が多いため、比較的精度のよい15県(総人口の33%)のデータを使ってがん種別の数値も含め全国の罹患数を推計している。
がん登録を全く実施していないのは、人口の1割以上が住む東京都と宮崎県。両都県とも、2012年度中にはがん登録を始める予定だが、すでに実施している県でも精度の低い県が多く、全国の罹患数、生存率となると、正確な数値が出せないのが実情なのだ。