がん患者に多いのは適応障害やうつ病
「再発するかもしれない」という精神的ストレスから心の病気になる人も少なくない。多いのは適応障害とうつ病だ。聖路加国際病院オンコロジーセンターでは、2010年4月、がん患者の心の治療を行うサイコオンコロジー外来(現在は精神腫瘍科)を開設した。12月までに外来を受診したがん患者100人(9割以上が乳がん)の内訳をみると、受診者の7~8割は初期治療がひと段落した患者で、不眠やうつ症状を主訴に受診している。100人のうち、55人がうつ病の前段階である適応障害、29人がうつ病と診断された。
半分以上が適応障害の段階
聖路加国際病院オンコロジーセンターのサイコオンコロジー外来を受診した100人の診断病名。適応障害が55人で過半数。うつ病29人中8人の薬剤性うつ病も見逃せない。
治療は、薬物療法のほか、患者の考え方を修正していく「認知療法」や、患者の話に耳を傾け、受け入れ、共感する「支持的精神療法」、リラクセーション法などが行われる。これらの治療によって、約3分の1の人が2~3カ月で軽快し、治療を終えた。
なお、乳がん患者のうつ病には、ホルモン療法で用いる抗エストロゲン薬が原因で起こる薬剤性のうつ病がある。前述の、うつ病と診断された29人中8人、約3割がこれに該当する。うつ病の症状が出るからといってホルモン療法を中止するわけにはいかないので、ホルモン療法は継続したまま、うつ病に対する薬物療法で対処する。どんな抗うつ薬を選択するかが重要だと保坂氏は言う。