乳房再建手術には「自家組織法」と「インプラント法」がある
真水氏は定期健診で乳がんの可能性があるといわれ、改めて受けた精密検査で、右の乳房に浸潤がんと非浸潤がんが1つずつ、左の乳房に非浸潤がんが1つあることが分かった。
真水美佳氏
女性3人で構成する異業種交流的ワーキングチーム「STP Project」の一員。著書に『理解されないビジネスモデル 消費者金融』『お金を使う人 お金に使われる人』(いずれも時事通信社)など。国際ビジネス研究センター代表取締役。乳房再建を経験した自らも、写真集『いのちの乳房』にモデルとして登場している。
医師から「右の乳房は全摘出する必要があります。左の乳房は温存手術になります」と聞かされる。命もさることながら、手術後の胸がどうなってしまうのか知るすべがなく、途方に暮れた。書物やインターネットを探したが、情報が溢れ過ぎていて、なかなか欲しい情報を得られない。専門的な情報は分かりづらく、かえって恐ろしさが増すばかり。ただただパニックに陥ったという。
そんなとき、当時の主治医から乳房再建手術の話を聞いた。「うちでは再建手術ができないので、再建を望むのでしたら、他の病院を紹介します。ご自分で納得する病院を探していただいても構いません。紹介状は必要なだけ書きますから、遠慮しないで言ってください」とその医師は言った。いくつかの病院でセカンドオピニオンを取得、最終的に乳がん摘出後、自家組織法による同時再建(右側)という方法で手術を受けた。
乳房再建手術には、患者自身の腹や背中などの脂肪や筋肉の一部を移植する「自家組織法」と、シリコン製などの人工乳腺(インプラント)を挿入する「インプラント法」の2種類がある。また、これらの方法を併用する場合もある。
写真集『いのちの乳房』では、下半身まで見せているモデルが少なくないが、これは、再建した乳房だけでなく、自家組織移植のドナー部分の様子が分かるようにする目的もあってのことだ。実際、真水氏の場合は、自家組織法によりお腹の脂肪をドナーとして移植したが、手術から2年4カ月後に撮影したときのお腹の傷は、ショーツのライン程度にしか見えないことが分かる。
「1人の写真だけでないのは、できるだけ、いろいろなパターンがあった方が、患者さんの参考になると思ったからです」と真水氏。そこで、乳房再建を手掛ける医師からモデル希望者を紹介してもらった。
真水氏は、モデル希望者の一人ひとりと面談して、写真集の意図を説明し、覚悟を確認したという。「登場してくださったモデルさんは皆、自分と同じ思いをしている人たちの役に立ちたいという強い気持ちを持った人たちです。撮影時も、誰もが臆することなく堂々と荒木さんのカメラの前に立ち、その覚悟は荒木さんにも間違いなく伝わっていたと思います」と、真水氏は撮影時の様子を振り返る。