患者が復職した後、困ることの一つに、受診のたびに会社を休まなければならないことがある。
もし、平日の夕方や週末など、患者やその家族が仕事を休まなくても受診できれば、就労の継続は容易になる。調査の結果、このように通常の診療時間以外の時間で受診できる体制を整えている医療機関は1割に満たなかった。しかし、抗がん剤の治療の日時や時間を、診療時間内であれば患者の仕事の予定に配慮して決めている医療機関は48%に上った(図2)。
図2 所属している医療機関の体制
「患者さんは、先生は忙しそうだから治療以外の仕事の話はできないと思っているかもしれない。しかし、がん専門医の多くは、仕事に関して患者がもっと相談していいと思っている。まずは、医療機関の誰にどう相談したらよいかも含めて主治医に聞いてみたらよいのではないか。また、抗がん剤や放射線治療の日程は患者の仕事に配慮してくれる医療機関も4分の1から半数はあるので、相談する価値はある」
和田氏は、治療と仕事の両立を図るためには、患者も1歩踏み出して主治医やソーシャルワーカーなどに相談する必要性を強調した。
ただ、日本臨床腫瘍学会は腫瘍内科医を中心とした学会であり、回答者の83.3%は内科医だった。がん治療の主治医が外科医である場合も多いが、外科医は今回アンケートに答えた内科医ほど患者の仕事に関心が高いとは限らないのではないかという指摘もある。
和田氏は「今後、がんと共に生きるサバイバーの意見も聞きながら、医療機関での優れた取り組み例を収集していきたい。さらにがん患者の就労に対する理解を広げるために、医療従事者向けのリーフレットなどを作成する計画だ」という。