食道から十二指腸までの上部消化管を詳しく調べるのに欠かせない内視鏡検査。最近、口ではなく鼻から内視鏡を挿入する方法が注目されているが、これまで、患者に比べて医師の関心はあまり高くなかった。ところが最近、医師の間でも経鼻内視鏡についての関心が高まってきている。
現在、経鼻内視鏡は、フジノンとオリンパスの2社から発売されている。
首都圏では今、テレビや電車のポスターなどで、鼻から内視鏡を入れる検査の広告を目にする機会が増えている。一般人における経鼻内視鏡の認知度は上昇しており、これまで内視鏡検査を受けたことが無い若い女性でも、知っている人が2割に上るほどだ。
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その一方で、これまで医師の関心はそれほど高くはなかった。理由の1つが、画質である。経鼻内視鏡は、鼻からスムーズに挿入できるよう、経口内視鏡に比べてチューブが1mmほど細く、先端についているカメラも小さい。このため、以前は、経鼻内視鏡は経口内視鏡に比べて画像が暗く、検査の精度としては劣ると指摘されてきた。
画質の向上と患者のニーズが後押し
しかし今は、技術の向上により、まだ経口内視鏡に匹敵するとまでは言えないものの、ほとんど大差ない画質が得られるようになってきている。
さらに、患者から経鼻内視鏡について聞かれる機会が増えたこともあり、医師の関心も急激に高まってきた。フジノンによれば、「患者から経鼻内視鏡検査をやってほしいと言われたが、鼻からどう挿入すればよいか分からない」といった趣旨の、医師からの問い合わせを受けることが多いという。
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今年5月に開催された日本消化器内視鏡学会において、フジノンは自社が主催したセミナー「経鼻内視鏡の挿入のコツ」に出席した医師300人を対象にアンケート調査を行った(回答率は約5割)。出席者のうち、既に経鼻内視鏡を使用している医師は約4分の1。多くは「これから使ってみたい」と考えている医師だ。使用するかどうか迷っているとの回答も合わせると、約半数の医師が経鼻内視鏡の導入を検討していた(図1)。
さらに、「患者や健診・検診などの受診者から経鼻内視鏡検査について尋ねられたことがある」と答えた医師は7割以上に上った(図2)。
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また今回の調査では、まだ医師の間に、経鼻内視鏡に関する正しい知識が広くは普及していない現状も浮き彫りになったと言えそうだ。セミナーの前後で、経鼻内視鏡を「今後使用したい」という回答は、24%から60%へと大幅に増加し、「使用しない」「迷っている」という回答は大きく減少した(図3)。
ちなみにフジノンでは、患者への情報提供を目的に、経鼻内視鏡検査が可能な施設一覧を、都道府県別に公開している(フジノン東芝ESシステムのホームページにある「経鼻検査可能施設一覧」)。
(小又 理恵子)
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