化学療法抵抗性のHER2陽性進行大腸癌に対して、トラスツズマブとHER2選択的経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)tucatinibの併用療法が有効な可能性が明らかとなった。フェーズ2試験であるMOUNTAINEER試験の主解析で、良好な抗腫瘍効果と持続的な効果が認められ、全生存期間(OS)中央値は2年となった。6月29日から7月2日にスペインバルセロナで開催されたESMO World Congress on Gastrointestinal Cancer 2022(WCGIC 2022)で、米 Duke University Medical CenterのJ. Strickler氏が発表した。
MOUNTAINEER試験は、米国と欧州で行われた多施設オープンラベルフェーズ2試験。HER2陽性(IHC 3+、IHC 2+/ISH+または腫瘍組織のNGSで増幅を確認)でRAS遺伝子野生型の進行大腸癌患者で、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、抗VEGF抗体の投与で増悪か不耐容だった患者を対象に行われた。測定可能病変を有し、ECOG PS 0-2でHER2標的療法を受けていない患者だった。
試験は当初、単群コホート(コホートA)で開始され、1日2回300mgのtucatinib投与とトラスツズマブの投与(1回目は8mg/kgを投与し、その後は3週おきに6mg/kgを投与)が行われた。その後、試験は拡大され患者をtucatinibとトラスツズマブを投与する群(コホートB)とtucatinib単剤を投与する群(コホートC)に4対3で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、コホートAとBを合わせた患者における盲検下独立中央判定によるRECISTv1.1に基づく確定奏効率だった。副次評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性など。
試験には、コホートAとBで、86人が少なくとも1回の治療を受け、コホートCで31人が登録された。コホートAとBを合わせた患者(A+B群)のうち2人はHER2を発現していないことから対象から排除され、コホートCの1人は投薬を受けなかった。データカットオフは2022年3月28日。
患者背景は、原発巣左側がA+B群は84.5%、コホートCは90.0%、試験開始時に肝転移があったのがA+B群は64.3%、コホートCは50.0%、肺転移があったのがA+B群は70.2%、コホートCは66.7%だった。全身治療歴数中央値は、A+B群が3.0(1-6)、コホートCが2.0(1-5)で、3ライン以上受けていたのはA+B群が39.3%、コホートCが30.0%だった。
全体の観察期間中央値は16.3カ月(IQR:10.8-38.2)。A+B群の観察期間中央値は20.7カ月(IQR:11.7-39.0)。A+B群の、確定奏効率は38.1%(95%信頼区間:27.7-49.3)、DOR中央値は12.4カ月(95%信頼区間:8.5-20.5)だった。3人(3.6%)で完全奏効(CR)が得られた。病勢コントロール率(DCR)は71.4%だった。病変の測定が可能だった80人中52人(65.0%)で腫瘍の縮小が認められた。
A+B群のPFS中央値は8.2カ月(95%信頼区間:4.2-10.3)で6カ月PFS率は59.0%、12カ月PFS率は34.2%、OS中央値は24.1カ月(95%信頼区間:20.3-36.7)で、12カ月OS率は72.7%、24カ月OS率は51.3%だった。
コホートCは、1人で部分奏効が得られ奏効率は3.3%、DCRは80.0%だった。
A+B群で多く認められたtucatinib関連の副作用は、下痢(52.3%)、倦怠感(29.1%)、吐き気(18.6%)だった。グレード3以上の多く認められたtucatinib関連の副作用はALT上昇(2.3%)と下痢(2.3%)だった。A+B群で副作用のためにtucatinibの投与が中止されたのは5.8%で、治療関連死は認められなかった。