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2022/05/06

NAC後再発高リスクのHER2陰性乳癌に対するsacituzumab govitecanで高い血液毒性、支持療法の厳密な遵守で試験は続行【ESMO Breast 2022】

中西美荷=医学ライター

 術前補助化学療法(NAC)後の再発リスクが高いHER2陰性乳癌において、術後補助療法としてのsacituzumab govitecan-hziyはカペシタビンと比較して全般的に有害事象発現率が高いことが、フェーズ3試験SASCIAの中間解析で示された。特に血液毒性は全グレードで97.8%、グレード3-4は55.6%に及んだが、既知のプロファイルであり、ガイドラインで推奨されている支持療法を厳密に遵守することが重要であるとされた。データモニタリング委員会(IDMC)は変更点なく試験の継続を勧告したことも明かされた。

 5月3日から5日までドイツベルリンとハイブリッドで開催されているESMO Breast Cancer(ESMO Breast 2022)で、ドイツHeidelberg University/University Hospital MannheimのFredrik Marme氏が報告した。

 sacituzumab govitecan-hziyは、Trop-2を標的とする抗体に加水分解性リンカーを介してイリノテカンの活性化代謝物であるSN-38を結合させた抗Trop-2抗体薬物複合体(ADC)で、NAC後の再発リスクが高いHER2陰性(HER-)乳癌における予後改善効果が期待されている。現在進行中のSACSIA試験(NCT04595565)では、16週以上のタキサンべースのNACを受け、組織学的完全奏効が得られなかった(non-pCR)トリプルネガティブ乳癌(TNBC)あるいはホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER-)でCPS+EGスコア3または2、リンパ節転移陽性(ypN+)の乳癌患者が、sacituzumab govitecan-hziy投与(SG群)または医師選択の治療(TPC群:カペシタビン、プラチナ製剤、観察)に1対1で無作為割付けされている。今回報告されたのは、最初の50例が無作為割り付けされ、4サイクルの治療または3カ月の観察の後に行われることが事前に規定されていた安全性に関する中間解析の結果である。

 本中間解析の対象はデータカットオフ時点(2021年10月14日)において2サイクル以上の治療を終えていた患者(早期中止例含む)および6週間以上観察されていた患者で、SG群が45例、TPC群が43例(カペシタビン投与32例+観察11例)。年齢(SG群46.0歳、TPC群51.0歳)、ECOG PS(0/1:SG群91.1/8.9%、TPC群76.7/23.3%)に違いはあったが、全体として2/3がトリプルネガティブ乳癌(TNBC)、80%超がグレード3、約50%がypN+という集団だった。

 重篤な有害事象(SAEs)がSG群の5例6イベント、TPC群の1例で認められた。SG群の6イベントは発熱性好中球減少2イベントと肺感染症、心房細動、入院に至った吐気、高グレードのビリルビン血症各1イベント、TPC群の1例は肺感染症だった。

 SG群全例(100%)、TPC群37例(86.0%)において何らかの有害事象が認められ、グレード3-4はそれぞれ30例(66.7%)、9例(20.9%)だった。血液毒性はSG群では全グレード97.8%で55.6%がグレード3-4だったが、TPC群では全グレード72.5%でグレード3-4はなかった。非血液毒性はSG群で全グレード100%、グレード3-4が33.3%(嘔吐、下痢)、TPC群ではそれぞれ83.7%、20.9%(下痢、手足症候群)。TPC群のカペシタビン投与例に限ると、血液毒性についてはTPC群全体と同じ傾向だったが、非血液毒性はSG群と同じように高頻度だった(全グレード96.9%、グレード3-4が28.4%)。

 治療延期はSG群が30例(66.7%)でTPC群(カペシタビン投与のみ)の16例(43.2%)よりも多く、もっとも多かった延期理由はSG群は血液毒性(46.2%)、TPC群は非血液毒性(23.3%)だった。減量を要したものはSG群12例(26.7%)、TPC群(カペシタビン投与のみ)9例(28.1%) で差は認められず、減量の理由は血液毒性がそれぞれ6例(13.3%)、1例(3.1%)、非血液毒性が5例(11.1%)、6例(18.8%)だった。

 解析時点における治療中/治療完遂はSG群75.0/11.4%、TPC群(カペシタビン投与のみ)65.6/25.0%。治療中止はSG群13.6%(再発1例、患者意思3例、医師判断2例)、TPC群(カペシタビン投与のみ)9.4%(再発、患者意思、医師判断各1例)だった。

 ディスカッサントのBarbara Pistilli氏(フランスGustave Roussy Canecer Center)は、NAC後の再発高リスクの患者集団に対して、より効果的な治療戦略が求められているが、その作用機序からも、TNBCで示されているPFS改善、Luminal乳癌で示されている奏効率といった転移乳癌に対する臨床効果をみても、sacituzumab govitecanは有力な治療薬候補であるとした。その上で、効果を得るには治療継続が重要だが、sacituzumab govitecanも、同じくADCであるT-DM1と同様に、早期乳癌(EBC)において転移乳癌(MBC)よりも治療中断率が高いことを指摘。患者視点に立てば静注製剤であることや脱毛症が多いことなどもコンプライアンスに影響する可能性があるが、やはり特に重要なのはリスクベネフィット比の最適化ではないかとの見解を示した。

 リスクベネフィット比の最適化においては、特に好中球減少が問題になると考えられるが、sacituzumab govitecanによる好中球減少はSN-38の主な代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)の遺伝子多型の影響を受ける可能性がある(Cancer. 2017; 123(19): 3843-3854)ことから、UGT1A1の遺伝子タイピングをして患者を選択する、遺伝型にかかわらずG-CSFを計画的に予防投与する、UGT1A1阻害薬の投与を避けるなどの対策が考えられるとした。

 また現在、この患者集団に対する多くの薬剤が開発中であり、術後補助療法の戦略にsacituzumab govitecanをどう組み込んでいくかを考えていくにあたり、逐次併用、同時併用に適している(feasible)かどうかといった視点で毒性を検討することも重要で、これについては現在行われているペムブロリズマブとの併用(NCT04468061)、PARP阻害薬との併用(NCT04039230)などの試験データも参考になるだろうとした。

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