進行肝細胞癌(HCC)の1次治療にレンバチニブと肝動脈化学塞栓療法(TACE)の併用は、レンバチニブ単独に比べて、全生存期間、無増悪生存期間、奏効率を改善し、忍容性もあることが、中国で行われた多施設無作為化比較フェーズ3試験であるLAUNCH試験で明らかになった。
中国First Affiliated Hospital, Sun Yat-sen UniversityのZhenwei Peng氏らが、1月20日から22日に米サンフランシスコとハイブリッド形式で開催されたGastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2022)で発表した。
LAUNCH試験(NCT03905967)は、治療歴がない進行HCC、もしくは根治切除後の初回再発のHCCで、肝臓に測定可能病変が1つ以上、1病変が10cm未満もしくは病変数10個未満で腫瘍量は50%未満、Child-Pugh分類Aの患者を対象に行われた。層別化因子はECOG PS(0と1)、腫瘍血栓(有りと無し)、体重(60kg未満と60kg以上)、施設であった。
患者をレンバチニブとTACEの併用群またはレンバチニブ単独の群に1:1の割合で無作為に割り付けた。2群とも無作為化後3日以内にレンバチニブが投与され、初回投与量は体重60kg以上に12mg/日、体重60kg未満は8mg/日。TACEは、初回はレンバチニブ投与後1日で開始し、その後は腫瘍の状態や肝機能に応じて施行した。
主要評価項目は、全生存期間(OS)だった。副次評価項目は、mRECISTに基づく研究グループ評価の無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、奏効率(ORR)、QOLだった。
統計学的な設定でサンプルサイズは336人、179人(69%)の死亡を認めた時点で中間解析を行うことが計画されていた。
2019年6月から2021年7月に患者登録され、338人が無作為化割付された。レンバチニブ+TACE群は170人、レンバチニブ群168人だった。2群の患者背景はバランスがとれていた。
mRECISTに基づくORRは、レンバチニブ+TACE群は54.1%、レンバチニブ群25.0%(p<0.001)で、病勢制御率(DCR)は94.1%と73.2%だった(p<0.001)。またRECISTv1.1に基づくORRは、レンバチニブ+TACE群は45.9%、レンバチニブ群20.8%(p<0.001)、DCRは92.4%と72.6%だった(p<0.001)。
OS中央値は、レンバチニブ+TACE群が17.8カ月、レンバチニブ群11.5カ月で、ハザード比は0.45(95%信頼区間:0.33-0.61)、ログランク検定p<0.001で、レンバチニブ+TACE群で有意に長かった。PFS中央値は、レンバチニブ+TACE群が10.6カ月、レンバチニブ群6.4カ月、ハザード比は0.43、ログランク検定p<0.001だった。サブグループ解析で、ほとんどのサブグループでOS、PFSはレンバチニブ+TACE群が良好だった。
多変量解析の結果、門脈腫瘍塞栓(PVTT)と治療群がOSの独立したリスク因子であり、年齢とPVTTと治療群がPFSの独立したリスク因子であることが示された。
グレード3/4の有害事象(AE)は、レンバチニブ+TACE群でレンバチニブ群に比べて高頻度に認められた。腹痛、吐き気、発熱、腹水、嘔吐、ALT増加、AST増加、高ビリルビン血症、低アルブミン血症が、レンバチニブ+TACE群で多かった。
治療中止後に、腫瘍のダウンステージにより、レンバチニブ+TACE群で26人(15.3%)に手術が行われ、2人は病理学的完全奏効を認めた。レンバチニブ群で手術は3人(1.8%)で、病理学的完全奏効は認めなかった。また治療中止後に抗PD-1抗体による治療がレンバチニブ+TACE群70人、レンバチニブ群84人に行われた。
レンバチニブの治療期間中央値は、レンバチニブ+TACE群で8.2カ月、レンバチニブ群で5.1カ月だった(p=0.025)。AEによるレンバチニブの減量は52.9%と44.6%、中断は44.7%と39.9%、中止は8.8%と8.3%で、大きな違いはなかった。
TACEは、患者1人あたり中央値で3回施行された(範囲1-6回)。レンバチニブ+TACE群170人のうち、薬剤溶出性ビーズ(DEB)を用いたDEB-TACEが117人、従来からのcTACEが53人に行われ、施行数の中央値は3回と5回だった。TACE中止の主な理由は病勢進行だった。
以上の結果から、レンバチニブとTACEの併用療法は安全で効果的であり、進行HCC患者に対する新たな1次治療となる可能性が示されたとした。