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2021/09/25

HER2陽性HR陽性乳癌のT-DM1術前補助療法で治療前の免疫原性が予後に関連【ESMO 2021】

八倉巻尚子=医学ライター

 HER2陽性ホルモン受容体(HR)陽性早期乳癌において、治療前の免疫原性(PD-L1やCD8の発現)が高い場合は予後良好だが、PIK3CA変異を有する場合はトラスツズマブ エムタンシンT-DM1)を投与しても予後不良であることが、術前補助療法としてT-DM1±内分泌療法を検証した第2相ADAPT TP試験のトランスレーショナルリサーチの結果で明らかになった。

 ドイツLudwig Maximilians University - GrosshadernのNadia Harbeck氏らが、9月16日から21日までWEB上で開催された欧州臨床腫瘍学会ESMO 2021)で発表した。

 ADAPT TP試験は、HER2陽性HR陽性早期乳癌375人を、T-DM1(3.6mg/kg)を投与する群(119人)、T-DM1と内分泌療法を併用する群(127人)、トラスツズマブと内分泌療法を併用する群(129人)の3群に無作為に割り付けた。手術後にpCRが得られた患者は化学療法の省略が認められた。

 主要評価項目はpCR(ypT0/is/ypN0)、副次評価項目は安全性、5年時の浸潤癌のない生存期間(iDFS)、全生存期間(OS)、トランスレーショナルリサーチであった。早期奏効は3週目の生検で評価し、治療前と比べたKi67の減少が30%以上、または低細胞数(腫瘍細胞数500個未満)の場合と定義された。

 試験の結果、pCR率はT-DM1群で41.0%、T-DM1+内分泌療法群では41.5%、トラスツズマブ+内分泌療法群では15.1%だった(Harbeck et al. JCO2017)。また副次評価項目の5年iDFS率は、pCRが得られなかった患者で82.7%だが、pCRが得られ化学療法を行なった患者では93.0%、pCRが得られ化学療法を行わなかった患者でも92.1%だった(Harbeck et al. ESMO 2020)。

 今回の解析ではIHCによる免疫系マーカー(CD8、PD-L1など)が治療前と3週目の生検検体で評価された。その結果、治療前のバイオマーカーはpCRよりもiDFSと関連していた。特に、免疫細胞PD-L1発現(ハザード比0.32)、CD8A発現(ハザード比0.61)、CD8のmRNA発現(ハザード比0.66)が良好なiDFSと関連していた。

 PIK3CA変異は患者の16.32%に認められた。T-DM1を投与した患者では、PIK3CA変異がiDFSと有意に関連していた。野生型の5年iDFS率は90.2%だが、変異型では68.4%だった(Log rank検定p=0.007)。

 PAM50によるサブタイプ分類で、HER2-enrichedサブタイプは21.3%、ルミナールAサブタイプは55.9%を占めた。HER2-enrichedサブタイプのpCR率は約40%だが、ルミナールAは25%とやや低かった。しかしルミナール Aの5年iDFS率は89.8%で、他のサブタイプと比較して良好であった(p=0.079)。

 以上の結果から、HER2陽性/HR陽性早期乳癌において、治療前のPD-L1(免疫細胞)やCD8で示される免疫原性は良好な予後を示すこと、PIK3CA変異を有する場合はT-DM1を投与して術後補助化学療法を行なっても予後不良であること、またルミナールAサブタイプはpCR率が低くても予後良好であることが示されたとした。結論として、de-escalation治療戦略は、ルミナールAサブタイプではpCR率と生存期間を考慮すべきであり、HER2-enrichedサブタイプはpCRに従ったアプローチが有望であるとした。

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