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2021/09/23

肝葉切除術で腹腔鏡手術は開腹手術と比べて機能回復までの期間、在院期間、術後補助療法開始までの期間を有意に短縮【ESMO 2021】

森下紀代美=医学ライター

 肝癌またはその疑いで肝葉切除術が行われる患者において、腹腔鏡下肝葉切除術は、開腹肝葉切除術と比べて、機能回復までの期間(time to functional recovery:TFR)、在院期間、術後補助療法開始までの期間を有意に短縮することが、多施設共同のランダム化比較試験ORANGE II PLUSから示された。腫瘍学的な転帰には差はみられなかった。9月16日から21日までWEB上で開催された欧州臨床腫瘍学会ESMO 2021)で、オランダMaastricht University Medical Center(MUMC)のRobert S. Fichtinger氏が発表した。

 腹腔鏡手術では、肝葉切除術を含む切除範囲が大きなmajor liver resectionが行われる件数が増加している。ただし、腹腔鏡下肝葉切除術を開腹肝葉切除術と比較し、周術期および腫瘍学的な転帰の優越性を示したランダム化比較試験のエビデンスは存在しない。

 ORANGE II PLUS試験の対象は、適応が受容され(既知の肝癌または疑い)、左葉または右葉の肝葉切除術±対側の楔上切除術が行われる成人患者。BMIは18-35kg/m2、米国麻酔科学会(ASA)のリスク分類でI-IIIであることとした。腹腔鏡下肝葉切除術を行う群(腹腔鏡手術群)、または開腹肝葉切除術を行う群(開腹手術群)に、患者を1対1でランダムに割り付けた。患者と病棟職員は術後4日目まで盲検とした。

 主要評価項目はTFRとし、定義には、術後に自力で移動できること、適切な経口摂取が可能で輸液が中止できること、経口の鎮痛薬で疼痛コントロールが可能なこと、肝機能検査値の正常化が含まれた。副次的評価項目は、在院期間、手術所見、術後合併症、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)、QOL、医療経済だった。すべての解析はITT解析対象で行った。

 2013年10月から2019年1月までに、欧州の16施設から352人が登録され、最終的な主要ITT解析対象は腹腔鏡手術群166人、開腹手術群166人となった。

 ITT解析対象において、両群の患者背景はバランスがとれていた。平均年齢は腹腔鏡手術群61.5歳、開腹手術群62.6歳、女性はそれぞれ40%、42%、チャールソン併存疾患指数の平均はそれぞれ6.3、6.2だった。腹部手術の既往は腹腔鏡手術群52%、開腹手術群55%、術前化学療法はそれぞれ32%、37%、術前の門脈塞栓術は10%、5%に行われていた。

 右葉切除術は、腹腔鏡手術群の63%、開腹手術群の65%に行われ、左葉切除術はそれぞれ37%、35%に行われた。楔上切除術が追加されたのはそれぞれ16%、14%だった。病理学的所見で悪性腫瘍だったのは、腹腔鏡手術群の136人(81%)、開腹手術群の145人(88%)で、このうち大腸癌肝転移はそれぞれ54%、46%、肝細胞癌は11%、17%、肝内胆管癌は10%、18%だった。

 主要評価項目のTFRは、腹腔鏡手術群で4日(IQR:3-5)、開腹手術群で5日(IQR:4-6)、推定差は-17.5%(96%信頼区間:-25.6--8.4)、p<0.001となり、腹腔鏡手術群で有意に短縮した。
 
 在院期間でも同様の差がみられ、腹腔鏡手術群で5日(IQR:4-7)、開腹手術群で6日(IQR:5-7)、推定差は-16.4%(99%信頼区間:-27.7--3.9)、p=0.002となった。

 手術時間の中央値は、腹腔鏡手術群で310分(IQR:255-379)、開腹手術群で254分(IQR:194-301)、推定差は56分、p<0.001となり、腹腔鏡手術群で有意に延長した。出血量の中央値は、腹腔鏡手術群で450mL(IQR:300-775)、開腹手術群で450mL(IQR:300-785)となった。腹腔鏡手術群の17%が開腹手術に移行した。

 術後合併症の発症は両群で同等だった。術後合併症の指標であるcomprehensive complication indexによる推定値はβ=3.5(IQR:-8.3-15.2、p=0.440)となった。重大な合併症発症のオッズ比は0.84(IQR:0.37-1.89、p=0.576)、30日以内の再入院のオッズ比は1.12(IQR:0.37-3.38、p=0.787)、90日以内の肝特異的な合併症発症のオッズ比は0.89(IQR:0.40-2.00、p=0.713)、90日以内の死亡のオッズ比は1.02(IQR:0.27-3.92、p=0.969)だった。Satava分類の2のオッズ比は3.57(IQR:0.90-14.19、p=0.018)となり、開腹手術群で良好だったが、Fichtinger氏は、腹腔鏡手術群におけるコンバージョン手術の影響と推察した。

 腫瘍学的な転帰も、両群で差はみられなかった。R1切除のオッズ比は1.65(IQR:0.69-3.97、p=0.136)、悪性腫瘍の再発のオッズ比は0.72(IQR:0.38-1.37、p=0.187)、肝癌の再発のオッズ比は0.67(IQR:0.34-1.34、p=0.134)となった。再発までの期間の平均は、腹腔鏡手術群493日、開腹手術群471日、推定差9日(IQR:-105-122、p=0.875)だった。

 術後補助療法開始までの期間の平均は、腹腔鏡手術群47日、開腹手術群60日、推定差は-13日(99%信頼区間:-23.1--1.8、p=0.003)となり、腹腔鏡手術群で有意に短縮した。

 OSのデータはimmatureであるが、3年時のOSのハザード比は1.23(99%信頼区間:0.72-2.11)、p=0.320だった。3年時のDFS中央値は、腹腔鏡手術群24カ月、開腹手術群24カ月、ハザード比0.89(99%信頼区間:0.60-1.32)、p=0.440だった。

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