このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

News ニュース

ニュース一覧へ

新着一覧へ

ニュース

2021/05/10

HER2陽性乳癌での免疫関連の遺伝子シグネチャーは術前補助療法のde-escalationに活用できる可能性【ESMO BREAST 2021】

八倉巻尚子=医学ライター

 HER2陽性ホルモン受容体(HR)陰性の早期乳癌に対し、術前補助療法としてペルツズマブトラスツズマブまたはペルツズマブ+トラスツズマブ+パクリタキセルを投与した患者において、免疫関連の遺伝子シグネチャーは浸潤性疾患のない生存期間(iDFS)の改善に関連し、特に化学療法を用いないペルツズマブ+トラスツズマブ投与でその傾向は強いことが、West German Study Group(WSG)によるフェーズ2試験のADAPT HER2+/HR-試験のトランスレーショナル解析で示された。

 ドイツEv. Hospital Bethesda/ University Medical Center HamburgのMonika Graeser氏らが、5月5日から8日まで開催されたESMO BREAST CANCER VIRTUAL CONGRESS(ESMO BREAST 2021)で発表した。

 ADAPT試験はアンブレラ型の試験で、ADAPT HER2+/HR-試験にはHER2陽性HR陰性乳癌患者が登録され、トラスツズマブ+ペルツズマブを12週間投与する群(92人)、トラスツズマブ+ペルツズマブ+パクリタキセル(80mg/m2を週1回)を12週間投与する群(42人)に5:2の割合で無作為に割り付けられた。投与後、手術は3週以内に実施された(Hofmann et al. Trials. 2013;14:261)。

 今回の解析は、RNAを用いて解析した遺伝子シグネチャーおよび間質の腫瘍浸潤リンパ球(sTIL)と、病理学的完全奏効(pCR)およびiDFSとの関連を明らかにすることを目的に行われた。これによりHER2陽性乳癌における治療のde-escalationを可能にする予測バイオマーカーを見つけたいとしている。

 pCR(ypT0/ypN0)率はトラスツズマブ+ペルツズマブ+パクリタキセル群で78.6%、トラスツズマブ+ペルツズマブ群で24.4%だった。遺伝子シグネチャーは、117人において、ベースラインの生検検体を用いてNanoString Breast Cancer 360パネルで解析された。

 遺伝子シグネチャーがpCRに及ぼす影響を解析した結果、全患者において、ERBB2とエストロゲン受容体(ER)経路の遺伝子シグネチャーではpCRは良好で、それぞれオッズ比は1.7(95%信頼区間:1.1-2.7)と1.7(95%信頼区間:1.1-2.6)だった。反対にPTENではオッズ比0.6(95%信頼区間:0.4-0.9)でpCRは不良だった。また化学療法を用いないトラスツズマブ+ペルツズマブ群では、ERBB2とER経路、FOXA1ではpCRは良好だが、BRCAnessではpCRは不良だった。

 iDFSについて、観察期間中央値60カ月で、iDFSイベントは13人(トラスツズマブ+ペルツズマブ群11人、トラスツズマブ+ペルツズマブ+パクリタキセル群2人)で、pCR達成後のiDFSイベントはなかった。免疫反応やER経路に関連する遺伝子シグネチャーではiDFSは良好で、いずれもハザード比は0.4から0.6だった。例えばPD1のハザード比は0.43(95%信頼区間:0.21-0.86)だった。この傾向はトラスツズマブ+ペルツズマブ群でより顕著で、PD1、PD-L1、マクロファージ、制御性T細胞などでiDFSは良好だった。一方、BRCAnessではiDFSは不良だった(ハザード比2.0、95%信頼区間:1.0-3.8)。

 全患者ではPD1やERBB2など10の遺伝子シグネチャーがpCRおよび/またはiDFSに関連し、pCRには3遺伝子シグネチャー、iDFSには8遺伝子シグネチャーが関連していた。またトラスツズマブ+ペルツズマブ群では18遺伝子シグネチャーがpCRおよび/またはiDFSに関連していた。

 遺伝子シグネチャー間でスピアマン相関を求めたところ、ERBB2とBRCAness、FOXA1は免疫関連の遺伝子シグネチャーとは相関しないことが示された。またER経路とPTENはそのほかの遺伝子シグネチャーとの関連性はなかった。

 sTILはベースライン(119人)と投与3週目(76人)に解析されたが、いずれもpCRおよびiDFSとは有意な関連はなかった。しかしベースラインのsTILレベルは免疫関連の遺伝子シグネチャーと相関があった。

 以上の結果から、遺伝子シグネチャーはpCRやiDFSに関連し、また免疫関連の遺伝子やシグナル伝達経路の活性化はiDFSの改善に関わる可能性が示唆されたとし、HER2陽性早期乳癌で腫瘍の免疫関連遺伝子の発現が亢進している患者はde-escalation治療の候補になるのではないかとしている。WSGではフェーズ2試験のKeyriched-1試験において、HER2陽性乳癌に対して化学療法を用いない術前補助療法として抗HER2薬と免疫療法(ペムブロリズマブ)の併用療法が検討されている。

この記事を友達に伝える印刷用ページ