高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性早期乳癌の術後補助療法として、CDK4/6阻害薬アベマシクリブと標準的な内分泌療法の併用の有効性を示したmonarchE試験において、アベマシクリブで認められる重要な副作用である静脈血栓塞栓症(VTE)、アミノトランスフェラーゼ上昇(EAT:ALT上昇とAST上昇)、間質性肺疾患(ILD)は、用量調整や薬剤投与で管理可能なことが明らかとなった。アベマシクリブの早期乳癌への投与の忍容性を支持する結果となった。
monarchE試験の安全性に関して、VTE、EAT、ILDに焦点をあてた解析の結果示された。5月5日から8日まで開催されたESMO BREAST CANCER VIRTUAL CONGRESS(ESMO BREAST 2021)で、京都大学の戸井雅和氏が発表した。
monarchE試験は、術後補助療法として標準的な内分泌療法に加えて、アベマシクリブを1日2回150mg投与する群(アベマシクリブ群)と内分泌療法のみの群(内分泌療法のみ群)を比較したフェーズ3試験。アベマシクリブ群で有意に浸潤癌のない生存期間(iDFS)を延長できることが主要解析で示されている(関連記事)。
monarchE試験の安全性評価の対象は、少なくとも1回の投薬を受けた5591人(アベマシクリブ群2791人、内分泌療法のみ群2800人)で、アベマシクリブの投与期間中央値は19.1カ月(データカットオフは2020年7月8日)だった。プロトコールには副作用管理用のガイダンスが含まれていた。アジア人には中国、香港、日本、韓国、シンガポール、台湾の患者が含まれていた。
解析の結果、多くのEAT、VTE、ILDは投与開始から6カ月以内に発現し、長期間の投与によって発現の蓄積やリスクの上昇は認められなかった。EATは十分に管理可能で可逆的であり、薬物性肝障害は起こしていなかった。VTEとILDも標準的な方法で管理可能だった。また、グレード2以上のILD発現は、アジア人と全体で同様だった。EAT、VTE、ILDを発現した患者のほとんどは、再発することなくアベマシクリブの投与継続ができていた。
VTEはアベマシクリブ群で多く発現していた。アベマシクリブ群のグレード3以上のVET発現率は1.3%(内分泌療法のみ群は0.3%)で、主に肺塞栓(0.9%)だった。VTEで投薬中止となったのは、アベマシクリブ群は0.5%、内分泌療法のみ群は0.1だった。肺塞栓を起こした患者の3分の1は重篤ではなく、入院は必要なかった。死亡例もなかった。ほとんどのVTEイベントは単回発生した(88.1%)。VTEを起こした患者のうち94%は抗凝固薬の投与を受けた。
VTEを起こした患者のほとんどはアベマシクリブの投与継続が可能で、19.4%が投与中止となった。アベマシクリブ群のVTEは最初の内分泌療法でタモキシフェンを投与された患者で多く、タモキシフェンの場合が4.1%、アロマターゼ阻害薬の場合が1.7%だった。VTEイベントの半数は両群ともに最初の6カ月で起きていた。グレード3以上のVTEはBMIが高い患者で多い傾向があった。
グレード3以上のEAT発現は、アベマシクリブ群の3.1%(投薬中止は0.8%)、内分泌療法のみ群の0.9%(投薬中止は0%)に発現した。グレード3以上のEAT発現の85%は単回起きたもので、投薬早期で多く発現し、6カ月以降の発現はまれだった。グレード3以上のEAT発現が起きた患者の71%で投薬中断/減量が行われ、16%がEATのために投薬中止となった。グレード3以上のALT上昇を起こした患者は、全員、用量調整や投薬中止で回復でき、薬物性肝障害となった患者はいなかった。グレード3以上のALT上昇とAST上昇はアジア人で多かった。
全グレードのILDの発現は、アベマシクリブ群で2.9%と内分泌療法のみ群の1.2%より多かったが、ほとんどがグレード1の無症候性だった。アベマシクリブ群で、グレード2以上のILDを発現した患者の47%は最初の180日間に発現していた。アベマシクリブ群で重篤なILD発現したのは14人(0.5%)で、1人が死亡した。アベマシクリブ群でILDを発現した患者の52%がステロイド/抗生剤の投与を受けた。19人(23%)がアベマシクリブの投与中止となった。
ILDはアジア人で全体よりも多く発現したが、グレード1が4.9%(全体は1.4%)と多く、グレード2以上の発現率、重篤なILDの発現率は全体と同等だった。