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2021/05/08

HER2陽性早期乳癌への抗HER2薬+アンスラサイクリンによる周術期治療の心臓に対する長期安全性を確認【ESMO BREAST 2021】

中西美荷=医学ライター

 HER2陽性(HER2+)早期乳癌(EBC)に対するペルツズマブ/トラスツズマブ+アンスラサイクリンを含むレジメンによる周術期補助化学療法の心イベント発現率は、長期にわたり低頻度に保たれている可能性が明らかとなった。多施設共同非ランダム化フェーズ2試験BERENICEの追跡期間5年の最終解析で示された。5月5日から8日まで開催されているESMO BREAST CANCER VIRTUAL CONGRESS(ESMO BREAST 2021)において、米国Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのChau Dang氏が報告した。

 抗HER2療法は、化学療法、特にアンスラサイクリンを含むレジメンと併用すると心毒性が増加するとされる。BERENICE試験は、ペルツズマブ/トラスツズマブ(PH)+アンスラサイクリンを含む化学療法の、術前補助化学療法(NAC)期における心臓に対する安全性を検証すべくデザインされた。「NAC期間中において心臓に対して安全」とする主要解析結果がすでに報告されている(Swain SM et al. Ann Oncol. 2018; 29: 646-653)。今回、2020年8月25日をカットオフとする最終解析結果が報告された。追跡期間中央値は64.5カ月(95%信頼区間:64.1-64.9)。

 BERENICE試験の対象はステージIIA、IIIのHER2+乳癌で左室駆出率(LVEF)55%以上の患者。NACのレジメンはdose-denseドキソルビシン/シクロホスファミド(ddAC療法)+パクリタキセル(コホートA:199例)、またはフルオロウラシル/エピルビシン/シクロホスファミド(FEC療法)+ドセタキセル(コホートB:201例)で、治験医師が選択した。PHは、両コホートともにタキサン投与開始時に導入し、手術後を含めて合計17サイクル投与した。

 コホートA、Bそれぞれの安全性解析対象は199例、198例、NAC完遂は182例、189例、抗HER2療法完遂は163例、176例、無治療追跡(TFFU)期に移行できたもの195例、195例。試験完遂は114例(57.3%)、147例(74.2%)で、中断の主な理由は安全性とは無関係だった。

 心臓に対する安全性に関して新たに懸念される問題は観察されなかった。NYHAクラスIII/IVの心不全発症は、コホートAの3例(1.5%)、コホートBの2例(1.0%)で、TFFU期における発症はコホートBの1例(0.5%)のみだった。LVEF低下(ベースラインから10%超の低下またはLVEF<50%)を認めたものは、コホートAの27例(13.6%)、コホートBの24例(12.1%)で、TFFU期においては、それぞれ12例(6.0%)、7例(3.5%)だった。

 TFFU期におけるグレード3以上の有害事象(AEs)は、コホートAが2例(1.0%)、コホートBが5例(2.5%)、重篤なAEsは3例(1.5%)、7例(3.5%)。コホートBの6例(3.0%)で乳房以外の二次発がんを認めた。またコホートAの7例(3.5%)とコホートBの13例(6.5%)が死亡し、主な理由は増悪(コホートAの4例、コホートBの12例)だった。

 有効性の成績は良好だった。コホートA、Bそれぞれにおいて、5年無イベント生存(EFS)率が90.8%(95%信頼区間:86.5-95.2)、89.2%(95%信頼区間:84.8-93.6)、4年における浸潤性疾患のない生存(IDFS)率が92.6%(95%信頼区間:88.7-96.5)、91.1%(95%信頼区間:87.0-95.1)、5年全生存(OS)率が96.1%(95%信頼区間:93.3-98.9)、93.8%(95%信頼区間:90.3-97.2)だった。

 ディスカッサントのEvandro de Azambuja氏(ベルギーInstitut Jules Bordet)、座長のSibylle Loibi氏(ドイツGBG Forschungs GmbH)はともに、長期安全性を確認した成績を評価しつつも、乳癌治療はde-escalationの方向に進んでおり、今回の患者集団に対してアンスラサイクリンが投与されることは少なくなっていることを指摘した。

 またAzambuja氏は、「無症候性のLV機能不全を早期に捉えるためには、LVEFよりも、心筋の長軸方向の収縮機能の指標であるGLSの方が適切」「心毒性の早期予測には高感度心筋トロポニンや心房性ナトリウムペプチド(NT-proBNP)といったバイオマーカーも有用」との見解を示した。

 質疑応答における「臨床試験では実臨床と比較してより若く元気な患者が多いため外挿には注意を要する」「今回の登録時における心臓に対する治療や併存疾患の情報がない」との指摘に対してDong氏は、「今回の対象の年齢中央値は49歳で確かに若かった」「心血管イベントリスクになりうる因子としては、10%が脂質異常、20%が高血圧、10%弱が糖尿病、50%超えが肥満だった」と答えた。

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