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2021/04/14

固形癌患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の投与においては性差を考慮したTMB-high閾値の再設定が必要か【AACR2021】

中西美荷=医学ライター

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療推奨において考慮すべきとされる腫瘍遺伝子変異量TMB)の現在の閾値は、患者の性別や癌の種類によっては適切でない可能性が示された。TMBとICIによる全生存期間(OS)改善との関係を男女別に検討した結果、明らかになった。メラノーマ患者では、TMB-highとOS改善との関連性は女性でのみ確認され、同様の傾向が膠芽腫、原発不明癌でも認められた一方で、非小細胞肺癌(NSCLC)ではTMB-highとOS改善との関係に性差はなかった。

 4月10日から15日に開催されているWeek 1 of the virtual American Association for Cancer Research Annual Meeting(AACR 2021)において、米国National Institute of HealthのNeelam Sinha氏が報告した。

 2020年6月、米国食品医薬品局(FDA)は、抗PD-1抗体ペムブロリズマブを、TMB高スコア(TMB-high:10mut/Mb以上)の固形癌患者に対する治療薬として承認した。その後メラノーマ患者において、TMB-highはICIに対する良好な反応性と関連しているものの、性差があることが報告された(Ye Y et al. Nat Commun. 2020; 11(1): 1179)。そこでSinha氏らは、TMB-highと全生存期間(OS)との関係を男女別に検討し、治療推奨におけるTMB-highの閾値の妥当性について考察した。

 データは、TMBとICIに対する反応性について検討した既報として最大のコホート(Samstein RM et al. Nat Genet.2019;51(2):202-206)から抽出した。対象は、50例以上のTMBおよびOSデータが存在する癌(メラノーマ、大腸癌、膀胱癌、NSCLC、食道および胃癌、頭頸部癌、原発不明癌、膠芽腫)。

 まず、メラノーマ患者について男女別のTMB分布を調べたところ、男性患者の方が高値であることが明らかになった。中央値は女性患者で6.51mut/Mb、男性では11.81mut/Mbだった。既報の他の3コホート(Roh W et al. Sci Transl Med. 2017; 9(379): eaah3560、David Liu et al. Nat Med. 2019 Dec; 25(12): 1916-1927、Valero C et al. Nat Genet. 2021; 53(1): 11-15)でもTMB中央値は男性患者の方が高値で、4コホートのメタ解析では有意差が認められた(Weighted Z test、p<0.006)。

 また、TMB-highのメラノーマ女性患者では、TMB-lowの女性患者と比較した全生存期間(OS)ハザード比が0.19で良好だったが、男性患者ではハザード比は0.94で、TMBとOSに関連性は認められなかった。既報の他の3コホート中2コホートにおいても、女性患者でOSハザード比がより低く、4コホートのメタ解析では有意差が認められた(Weighted Z test、p<0.027)。

 Sinha氏らは抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体療法、化学療法についても、TMBとOSの関連性について検討したが性差は認められなかった。

 他の7種の癌では、膠芽腫114例(p=0.589)、原発不明癌76例(p=0.063)において、TMBとOSの関連性に性差が存在する傾向が認められた一方、NSCLC(329例)では性差はなかった(p=0.987)。

 また、メラノーマコホートの例数を、男女比を保ったまま膠芽腫と原発不明癌と同様にまで減らして検討すると、性差を認めたものの統計学的有意差に至らなかったことから、Sinha氏らは「膠芽腫と原発不明癌で有意差が得られなかったのは、少数例だったことが原因である可能性が高い。より大規模なデータセットを用いて、慎重に検討する必要がある」とした。

 そして、「現在のTMB-highの閾値を用いれば、ベネフィットにおける性差を生む可能性があることが示唆された」「ヘルスケアにおける長年の性差について注意を喚起することは、男女ともに平等な治療機会を得ることの一助になる」「今回得られた知見は、性差だけでなく、人種差や社会的格差、文化の違いなどを含む、がん医療における格差に関わる研究に影響を与えるだろう」と話した。

 共同研究者のSanju Sinha氏も、「現在、TMB-highの閾値はICI使用の必須条件とはなっていないものの、治療推奨に際して臨床家が考慮するであろうことは否めない」と話し、性差を生む可能性について周知していく必要があるとの見解を示した。また他の癌についてもデータ集積が必要であり、今回の報告をきっかけに、データ集積が進むことに期待を寄せた。

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